著者
神谷 勝広
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.12-19, 2014

<p>文化十五年(一八一八)三月、伊勢古市遊廓にあった備前屋は、大広間を新装する。その際、式亭三馬作歌川国直画『伊勢名物通神風』を宣伝のために無料で配った。しかしそればかりではなく、同書に見える記述から、三馬と鹿津部真顔が作成したチラシや、柳々居辰斎画の浮世絵も配っていたことがわかる。さらに、歌川国丸画山東京山賛の浮世絵も配っていたと確認でき、大広間の床の間に大田南畝筆額を掛けていたことも判明する。つまり、備前屋は、多種多様な江戸文芸を自店の広告宣伝に活用していたのである。伊勢と江戸の文化的な関わりは、従来の想定以上に濃いと見なすべきだろう。</p>

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