- 著者
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田中 総一郎
- 出版者
- 日本重症心身障害学会
- 雑誌
- 日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, no.1, pp.1-2, 2017
第43回日本重症心身障害学会を、杜の都仙台で開催させていただくことになりました。今回のテーマは「重症心身障害児者のいのちを育むこころと技」です。ご家族、医療、福祉、教育、行政などさまざまな立場の皆さまが、大切に重症心身障害児者のいのちを育まれてきた、そのこころと技を持ち寄る場所になり、お互いのはげみになればうれしく存じます。また、副題を「うまれてきてよかったと思える社会作り」といたしました。病気や障害のために生きづらさを抱えた方々ですが、日々携わる私たちはその幸せをいつも願っています。そして、その笑顔が実は私たちの幸せでもあることに気づきます。お互いに支え支えられる関係から、うまれてきてよかったと思える社会を作りたいですね。特別講演「生きることは、聴くこと、伝えること」では、仙台市在住の詩人、大越桂さんと昭和大学医療保健学部の副島賢和先生による対話形式で、いのちと言葉についてお話しいただきます。大越さんは、出生時体重819グラム、脳性まひや弱視などの障がいや病気と折り合いながら生きてきた重症心身障害者です。「自分は周りが思うより、分かって感じているのに伝えられない。私はまるで海の底の石だった。」喉頭気管分離術を受けた後に13歳から支援学校の先生の指導のもと筆談を始めました。今は介助者の手のひらに字を書いて会話をします。「生きることを許され、生きる喜びが少しでもあれば、石の中に自分が生まれる。」副島先生は昭和大学病院の院内学級の先生です。病気の子どもである前に、一人の子どもとして向き合ってこられました。「もっと不安も怒りも表に出していいよ。思いっきり笑って自分の呼吸をしていいんだよ」と子どもをいつもそばで支えてくれます。皆さまご存知の小沢浩先生(島田療育センターはちおうじ)も絡んで、楽しい時間となるでしょう。平成28年6月3日に公布された「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律」では、医療的ケア等を必要とする障害児が適切な支援を受けられるよう、保健、医療、福祉その他各関係分野の連携推進に努めることとされています。これからは、自らの専門性を高めることと同じくらいに、いかに他分野の方とコラボレーションできる力があるかが問われます。教育講演1「超重症児(者)への療育・教育的対応について」では、長年にわたって重症心身障害教育に尽力してこられた東北福祉大学の川住隆一先生にお話しいただきます。教育講演2「重症心身障害児(者)の在宅医療のあり方」では、医療法人財団はるたか会の前田浩利先生に、多職種連携や地域包括ケアなどこれからの在宅医療の考え方についてお話しいただきます。平成23年の東日本大震災と平成28年の熊本地震の経験は、重症心身障害児(者)の防災に大きな教訓を残しました。シンポジウム1「災害に備えて~大切にしておきたい普段からのつながり~」では、座長を仙台往診クリニックの川島孝一郎先生にお願いして、震災後早くから被災地の在宅医療に力を注いでくださった石巻市立病院開成仮診療所の長純一先生、障害者や高齢者を巻き込んだ町内会作りを提唱する大街道おたがいさまの会の新田理恵さん、人工呼吸器の子どもたちをいち早く医療機関へ収容してくださった熊本再春荘病院の島津智之先生、安心できる日常生活への復帰のシステム作りを準備してくださった社会福祉法人むそう戸枝陽基さんにお話しいただきます。シンポジウム2「家族と暮らす・地域で暮らす~重症心身障害児者の在宅医療・家族支援~」では、座長をさいわいこどもクリニックの宮田章子先生にお願いして、福井県で初めての在宅医療専門クリニックを立ち上げたオレンジホームケアクリニックの紅谷浩之先生、0歳から100歳までなんでも相談に応じることで切れ目のない看護を実践されてきた医療法人財団はるたか会の梶原厚子さん、日本初の医療的ケアの必要な子や重症心身障害児の長時間保育を実施する障害児保育園ヘレンを開園された認定NPO法人フローレンスの駒崎弘樹さん、相談支援専門員として理学療法士として保育士として子どもとご家族に寄り添う社会福祉法人なのはな会の遠山裕湖さんにお話しいただきます。今回から新しい試みとして講義と実技を組み合わせたハンズオンセミナーを行います。つばさ静岡の浅野一恵先生には「摂食嚥下療法・まとまり食」について、うえだこどもクリニックの上田康久先生と群馬県小児医療センターの臼田由美子先生には「呼吸理学療法・排痰補助装置」についてコーディネートしていただきます。参加人数に限りがございます。お申込み方法など詳細はホームページに記載いたしますので、皆さま奮ってご参加ください。一般演題やポスター発表など、多数ご応募いただけましたら幸いに存じます。爽やかな秋の仙台で、皆さまにお目にかかれますことを楽しみにいたしております。