著者
饗庭 靖之
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.641, pp.641_117-641_142, 2018

社会保険料の強制徴収の法的根拠について,最高裁は,国民の生活保障という社会保障の目的に沿って保険原理が修正され,「保険料は,被保険者が保険給付を受け得ることに対する反対給付として徴収される」ことにあるとする。年金の賦課方式は,下の世代が自分の年金給付のために保険料の負担をしないときは,強制徴収の根拠が喪われる。年金制度が老後に必要な生活費を賄うことを目的としていることから,年金二階部分は所得比例の給付に代えて,年金給付額は一律とすべきであり,一律給付としても給付反対給付の関係を満たす。AIJ事件で,多数の厚生年金基金が詐欺被害にあったのは,厚生年金基金は,ガバナンスが弱く,金融知識が不十分な体制で資産運用を行っていたためと考えられ,独立した小規模な年金を設ける制度は適当でなく,3階部分の企業年金を民間の年金保険に代替させていくことを検討していくべきである。

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