著者
深見 泰孝
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.613, pp.613_129-613_148, 2011-06-30 (Released:2013-04-17)
参考文献数
46

明治期に我が国では,仏教系生命保険会社と呼ばれる生命保険会社が設立される。この会社は,教団や僧侶が直接,間接的に関与したことが特徴である。保険思想が十分に普及していなかったとされる当時,多くの門信徒を抱える教団を活用した保険募集は,募集を優位にすすめる方策と考えられた。ところが,多くの会社が明治期に破綻や合併,支配権異動などで仏教系生命保険会社としての営業活動を終えている。そこで,本稿では,これまで明らかにされていなかった仏教系生命保険会社の支援形態の差異に注目し,この違いが経営に与えた影響,破綻要因に与えた影響を分析し,また,仏教系生命保険会社が保険業史上に果たした役割について検討した。
著者
鴻上 喜芳
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.615, pp.615_89-615_108, 2011-12-31 (Released:2013-03-22)
参考文献数
17

米国の医療事故訴訟にかかるコストは1970年代以降ほぼ一貫して上昇し,かつこの間に三度保険危機があったために,医師・病院が医療事故賠償責任保険にアクセスし難くなり,防衛的な医療となったり患者の受診機会が阻害されたりする問題となっている。これに対し,州・連邦は不法行為制度改革を中心とする取組みを行ってきたが,近年は法改正を伴わない新たな取組みも出現してきている。これらの効果もあり,2005年からは医療事故訴訟コスト,医療事故賠償責任保険引受成績とも落着きを見せている。一方,保険危機により,保険マーケットには大きな変化が生じている。株式会社形態保険者がシェアを減らし,代わってRRGが躍進してきた。また,引受約款はオカレンスからクレームズメイドに移行してきている。米国の状況を参考にし,日本の保険者においては,医師賠償責任保険の安定的な保険運営,医師賠償責任保険へのロングテール導入,ならびに医師と患者の良好な関係を維持する新たな無過失補償保険の開発の検討が期待される。
著者
宮地 朋果
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.614, pp.614_41-614_57, 2011-09-30 (Released:2013-03-22)
参考文献数
31

保険契約における公平性に関しては,保険数理や統計的なデータのような客観的判断とともに,国民性や価値観などの主観的判断も加わる。本稿は,これらの要素がいかに組み合わさり,公平性という価値判断が生成されるか理論的に考察することを目的とした。危険選択は,保険会社や保険数理の枠組みにおける判断と,一般消費者の認識との乖離が特に顕著となるおそれがある。したがって,保険数理的公平性と社会的公平性もしくは公共性をいかに図るかという視点が必要となる。逆選択の不利な影響を防ぐための危険選択や,適正なリスク細分化が求められるが,社会・経済制度も含む様ざまな環境変化により,その根拠となるべき価値判断の基準も変わる。近年その速度が高まるなか,社会環境の変化に事後的に対応せざるを得ないという保険の限界を鑑み,危険選択をはじめとする保険実務の在り方を,実務・研究の枠組みを超えて,広く検討することが期待される。
著者
福田 弥夫 井口 富夫 佐野 誠 松下 泰
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.630, pp.630_331-630_438, 2015-09-30 (Released:2016-07-27)
参考文献数
16
著者
早川 淑人
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.616, pp.616_165-616_184, 2012-03-31 (Released:2013-08-02)
参考文献数
9

PTA団体では安全補償制度として各種保険を採用しているが,社会環境の変化と活動の多様化から,活動の実態から乖離した補償内容になりつつある。特に,法律と保険約款における「学校管理下」の解釈の相違,授業補助や少子化による他社会教育団体と連携するPTA活動では,保険金・給付金支払いの可否が問題になることがある。本稿では,PTA活動の現状を調査分析し,『新・教育基本法』の観点から必要とされる補償内容が実際に商品化されるまでの安全補償制度上の諸問題を考察し,(1)団体活動上は,活動方法が社会の流れとともに変化する点,(2)補償上は,保険商品が作られた当時とは社会背景が異なっている点,(3)安全補償制度上は,学事歴と保険始期が一致しないなどの運営上の問題点があると指摘した。これらは子どもの成長過程に応じた教育課程単位でのPTA専用商品の開発や,社団法人日本PTA全国協議会などの全国組織を契約者にすることで一定の解決が図られると思われる。
著者
菊池 直人
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.626, pp.626_127-626_144, 2014-09-30 (Released:2015-08-13)
参考文献数
26

日本では,未成年者を被保険者とする死亡保険契約について,保険法上特段の規定はなく,道徳危険については,保険者の自主規制や金融庁の監督によって対応がなされている。すなわち,保険金額の相当性および適切な引受・支払基準の構築,その遵守など,運用上の問題に収束したといえる。一方,諸外国に目を向けると,未成年者を被保険者とする死亡保険契約については,立法上制限を設ける例が多数みられる。多くの場合,意思能力の有無を判断材料とし,保険契約を禁止したり,保険金額を制限したりしている。これは,被保険者の同意とは,当該保険について了承する意思表示であるとともに,道徳危険を伴う保険についての自己決定であるとして,未成年者といえども代理による同意を実質的に認めない。我が国の未成年者の生命保険契約は,過去の事例からも道徳危険性は少ないとされてもいるが,意思能力の有無に基づく保険契約上の規制が必要であると思われる。
著者
大谷 孝一
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.621, pp.621_201-621_209, 2013-06-30 (Released:2014-09-17)
著者
早川 淑人
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.620, pp.620_241-620_260, 2013-03-31 (Released:2014-09-17)
参考文献数
1

PTA団体傷害保険,学校契約団体傷害保険,PTA管理者賠償責任保険などで構成される現在のPTA 安全補償制度を,アンケート結果から分析するとともに,補償ニーズを中心とした制度運営上の諸問題を考察したものである。現在のPTA安全補償制度において,補償ニーズと補償内容の最大の相違点は,(独)日本スポーツ振興センター法と保険約款での「学校管理下」の解釈の相違である。また教育基本法では,各種の社会教育団体や町内会との連携活動,学校教育施設や社会教育施設の相互活用を推進している。しかし保険での補償は,PTA活動内容や活動方法によっては補償対象外になるなど,補償内容は社会の変化や補償ニーズに対応しきれていない。これらは従前の学校内を中心としたPTA活動ではなく,社会教育団体として地域と一体化したPTA活動に視点を移すこと,日本全体のPTA組織メリットを生かした保険商品開発が行われることで一定の解決が図られると思われる。
著者
長谷川 仁彦
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.616, pp.616_145-616_164, 2012-03-31 (Released:2013-08-02)
参考文献数
11

保険法・保険約款で免責とされる「自殺」は,被保険者が故意に自己の生命を断ち死亡の結果を生ぜしめる行為であり,死亡者の自由な意思決定に基づきその者の身体動作により死亡の結果を来たすべきときを指すとされる。一方,精神病その他の精神障碍中または心身喪失中の行為による自殺は「自由な意思決定能力」を欠いたものであり免責事由には該当しないとするのが通説・判例である。近時,自殺者のうち概ね1/3に当たる約1万人が精神疾患を原因によるものとされ,それらを原因とする自殺が全て意思決定能力を喪失ないし減弱したうえでの自殺とはいえない。しかし,精神疾患の一つであるうつ病によって行為選択能力が相当制限されたうえでの自殺は「自由な意思決定」を欠いていることになるので,免責となる「自殺」にはあたらないと考えられる。
著者
小川 功
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.602, pp.602_51-602_67, 2008-09-30 (Released:2010-10-15)
参考文献数
9

第一生命など現代相互保険会社が目指す株式会社化・上場の先には当然に敵対的買収のリスクが潜む。平成12年に自称「投資ファンド主宰者」がホワイト・ナイトを装って資本参加した直後に,社金を詐取し破綻させた大正生命事件は記憶に新しい。株式会社が主流であった戦前期生保業界では二・三流以下の“虚業家”的資本家による濫用的買収・乗取りが横行,契約者持分収奪の弊害も少なくなかった。本稿では相互組織の中央生命で,基金を大量に肩代りし乗込んできた買収者を役員に受入れるも,「万事に抜目なき」社長が「それとなく警戒し,社の印などは絶対に渡さず,有名無実の専務取締役として置」き,本人の醜聞暴露を機に徹底的に排除したというリスク管理の成功例を紹介する。同様に高官との人脈等を誇示して新進実業家を気取る“虚業家”を「助言のプロと思い,パートナーとして信頼」し切って一任した大正生命の脇の甘さと好対照をなす。
著者
浜崎 学
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.619, pp.619_241-619_259, 2012-12-31 (Released:2014-05-08)
参考文献数
15

東京電力福島第一原子力発電所(沸騰水型軽水炉,BWR)の事故は,東日本大震災による巨大津波という共通原因によって,最終的な熱の逃がし場(ヒートシンク)と安全設備を支える電源系が広範に機能を喪失したこと(クリフエッジ効果)が直接の原因であった。加圧水型軽水炉(PWR)プラントは,蒸気発生器(SG)によって主蒸気系を原子炉冷却系から隔離しているため,同様の津波に襲われて電源を喪失したとしても,放射性物質を含まない蒸気を大気放出することで最終ヒートシンクを確保でき,自然循環によって原子炉を冷却できるという優れた耐性を有する。更に,今回の事故の教訓を反映し,電気設備等の水密化,非常用発電機の高台設置等の津波対策を進めており,格納容器による深層防護の強化も計画している。今後も,世界最高水準に安全性を高めたPWR技術によって低炭素エネルギー源の確保に貢献していく所存である。
著者
野崎 洋之
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2016, no.633, pp.633_33-633_60, 2016-06-30 (Released:2017-05-13)
参考文献数
43

保険には一定の経済波及効果が期待され,特に損害保険分野における財物保険は,その補償が,毀損した財物の復旧を目的にしていることから,大きな経済波及効果を生む可能性がある。本研究では,損害保険の経済波及効果に関する実証研究として「地震保険」,殊に「東日本大震災で支払われた地震保険金」に着目し,その保険金の使途等に関する調査を実施した。その結果,地震保険金の6割近くが建築修繕費に充てられており,地域間産業連関表(2005)を用いて地震保険金の経済波及効果の推計を行ったところ,東日本大震災で支払われた地震保険金は3兆円を超える経済波及効果を有し,災害復興に大きく貢献していることが明らかになった。一方で,本研究が地震保険の価値を相対的に評価できていないことを認識した上で,保険金の使途に関する知見が十分に蓄積されていない現状を踏まえ,更なる実証研究の実施と比較研究の必要性を今後の課題として纏めた。
著者
宮正 一洋
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2017, no.636, pp.636_167-636_187, 2017-03-31 (Released:2018-01-29)
参考文献数
29

英国には,中世が起源とされる友愛組合が,相互扶助を目的に固有の根拠法(友愛組合法)に基づき,今も存在している。友愛組合は,当初は庶民の冠婚葬祭等における相互扶助に始まり,1911年成立の国民保険法下では,一時期,公的な保険者の役割を担うも,1948年のNHS 創設(国営化)後はその地位を失い,公・私の医療保険混合型制度の下で再び民間保険の役割に回帰し,今日では,英国の金融監督規制機関の下で生命保険会社に伍して各種保険・金融商品を取り扱っている。友愛組合の組織形態から派生した協同組合は,わが国の生活協同組合(生協)のルーツでもある。わが国の共済生協は,消費生活協同組合法を根拠法とし,多くは生命や傷害の共済制度(商品)を提供している。しかし,わが国の医療保険制度は,英国のような公・私混合(並存)型ではないため,シンプルな定額給付型で少額な掛金の制度となっている。
著者
横田 尚昌
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.607, pp.607_59-607_78, 2009-12-31 (Released:2012-05-19)
参考文献数
29

保険法17条2項は,責任保険について,「被保険者が損害賠償の責任を負うことによって生ずることのある損害をてん補するものをいう」と定義する。したがって,責任保険は加害者の保護を第一義的な目的とする保険である。その一方で,この保険には被害者保護機能がある。本稿は,保険金からの優先的な被害の回復の制度として当初検討されていた被害者の保険者に対する直接請求権の制度について概観し,なぜこの制度が立法化されずに保険法22条では特別の先取特権の制度が定められることとなったのかという点について,両者の比較を行いつつ,先取特権の制度を導入することの意義と問題点を明らかにし,同条によって被害者を保護することについて検討する。
著者
李 潤浩
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.613, pp.613_111-613_127, 2011-06-30 (Released:2013-04-17)
参考文献数
22

韓国において最近10年の間,保険詐欺問題は当局と業界のもっともホットなイシューの一つであった。この間,保険詐欺を実証する研究方法と詐欺摘発技術が進展し,法整備を含め保険詐欺防止体制が構築される等,保険制度の多くの資源が保険詐欺防止に割り当てられた。その結果,保険詐欺は公序良俗に反するということへの理解と共感が広がったほか,保険詐欺の摘発率が高まってきた。しかし一方では,保険コストの引き上げや正当な理由なしに支払いを拒否したりするなど,保険制度の社会的効用を引き下げ,保険制度に対する大衆の否定的認識を助長し,保険詐欺を容認する風潮を創り出すという悪循環を繰り返してきた。この事実は,保険経済学と犯罪学の観点からのみ講じられてきた取り組みの限界を露呈していることを示唆する。特に保険詐欺問題のほとんど全部と言っても過言ではない「出来心詐欺」問題に対してはこうしたアプローチは限界を露呈し,例えば,社会心理学など新たなアプローチが要求される状況にきている。

1 1 0 0 総合司会

著者
井口 富夫
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.599, pp.59-60, 2007
著者
江利口 耕治
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.620, pp.620_131-620_149, 2013

2011年に発生した東日本大震災,タイ洪水をはじめ過去の自然災害による高額損害における再保険の寄与度は一定水準に達しており,巨大災害にかかわる保険金支払いにおいて再保険は大きく貢献している。<BR>2011年度は,自然災害の多発を受け再保険会社の事業成績は悪化,コンバインド・レシオが100%を超過する再保険者も多数出た。こうしたなか迎えた2012年度の再保険の特約(契約)更改では一定の料率上昇が見られ,再保険マーケット・ハード化の兆しも見られた。<BR>想定外を排除し,あらゆるリスクに備えることが巨大災害における再保険金支払いを確実にするとともに,再保険キャパシティの裏づけとなる担保力維持に繁がる。こうした観点から,包括的な取引形態である特約再保険の取引においては,出再されるリスクに関するより高度な情報開示や,契約条件の強化が求められている。
著者
大塚 英明
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2016, no.635, pp.635_21-635_41, 2016

今次の募集制度改革では,平成12年に規制緩和の流れの中で認められた「代理店と雇用関係にない使用人」による募集が見直され,新監督指針では,使用人は実質的に代理店との間に雇用契約の締結を要求されるようになった。しかもそこでは保険業法275条3項が強く意識されているため,「雇用関係にない委託型募集人は募集再委託の禁止に抵触する」という表面的・定式的な論法が定着しつつある。そのためにとくに「委託型」損保代理店の現状を混乱させることのないよう,ある種の妥協案さえ提示された。しかし,そもそも募集再委託の禁止は,絶対的な原理なのであろうか。そして,募集人の「適切な教育・管理・指導」は,本来,募集再委託の禁止とどのような関係で捉えられるべきなのであろうか。本稿はこれらの点をあらためて検討することにより,「募集」と「教育・管理・指導」の一致こそこの問題の本質であり,代理店の自立・自律を志向する募集体制変革においては,委託型募集人の現状よりはむしろ募集再委託禁止という理論の側を見直すべき可能性があることを提言する。