著者
束田 大樹
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2019, 2019

<b>1.研究の背景と目的</b><br> 1993年に制度が開始された「道の駅」は、当時の建設省によって103カ所の施設が登録されてから、毎年増え続け、その数は2019年1月現在、1145カ所にものぼる。高速道路のSAやPAと同じく、一般道路にも休憩施設を整備することを目的としたため、制度開始当初は道路休憩施設という意味合いが強かった。しかし近年、道の駅は、農産物直売による農業振興、観光拠点としての地域振興、更には地域福祉、交通結節点、防災等の役割も担うようになってきており、地域の核となる施設に変化している。<br> 道の駅は原則、地方自治体やそれに代わり得る公的な団体が設置し、管理・運営は地方自治体、または自治体からの業務委託や指定管理により、第三セクターや地域の民間事業者等が行う。そのため、道の駅は地方自治体それぞれの、道路休憩施設や地域振興に対する考え方や財政事情、土地の特徴がよく表れる施設である。<br> この研究では、自治体が道の駅を設置した背景と目的、設置をした際の国や県の関与、現在の運営状況を明らかにし、立地による違いを分析することを目的とする。<br><br><b>2.対象地域と調査方法</b><br> 対象地域は、群馬県内の道の駅を設置しているすべての自治体と全32か所の道の駅とする。県北部や西部は山間地域が多くを占め、南部や東部には関東平野が広がるため、山間部と平野部の道の駅を比較するのに適当な地域であると判断したからである。<br> 調査方法は、対象地域内各自治体の担当部署への聞き取りを行い、得られた情報をもとに、各自治体にとっての道の駅位置付けを分析する。そして、対象地域を、過疎地域、特定農山村地域、それ以外の地域(主に平野部)に分け、地域ごとに立地する道の駅の特徴を比較する。<br><br><b>3.研究結果</b><br> 調査結果の中で特に注目されるのは、整備手法、設置の際の補助金、条例の3点である。<br> 道の駅の整備方法は、道路管理者と自治体で整備する「一体型」と、自治体で全て整備を行う「単独型」に分けられる。全国的には「一体型」の方が多いが、群馬県は、「一体型」は32か所中4か所しかなく12.5%と極めて低い。<br> 補助金は、一番多かったのが、農林水産省の農業振興に関する補助金であった。道路休憩施設ではあるが、国土交通省の社会資本整備等の補助金は農林水産省の約半数にとどまった。<br> 条例は、自治体が道の駅を設置する際に制定した条例の「設置の目的」に関する条文に注目すると、農業振興や地域振興が多く、道路休憩を目的として明記している自治体は少なかった。<br> 群馬県の道の駅は「単独型」が多く、自治体が独自で設置しているため、道路休憩よりも地域振興や農業振興を重点化する傾向になると考えられる。地域ごとに比較すると、過疎地域、特定農山村地域の道の駅は、農林水産省から受けた補助金が多く、設置目的も地域振興や農業振興が多い。逆にそれ以外の地域では、国土交通省から受けた補助金が多く、設置目的も道路休憩の意味合いが強い。地域の状況によって自治体が道の駅に求めるものが異なるのである。

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