著者
古川 俊治
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.47-53, 2019

<p>公的医療給付費は40兆円を超え,一般会計からの繰り入れも11兆6000億円(2018年度予算ベース)を超えている。世界的にも突出した水準で公的債務が累積を続ける財政状況の中,今後の社会保障費の伸びは,主として医療・介護費の伸びに起因すると予測されている。高額な医療技術はその原因と考えられており,保険適用のある医薬品の薬価に関して「費用対効果」の考え方の導入が始まった。今後は,革新的ではあるが高価な新医療技術の公的医療保険における取り扱いは,財政に及ぼす影響を考慮せざるを得ないと考えられる。</p><p>限られた財の配分の問題は,「配分の正義」として語られてきた医療倫理学上の古典的課題である。基本的視座としては,平等主義的な考え方と功利主義的な考え方が対立する。広く用いられ,中医協でも採用されたQALY(Quality-adjusted life year)は,後者の1例であるが,マクロの議論と現場の臨床との整合性や,「効果」の評価の仕方などに多くの議論がある。</p><p>今後は,医薬品に限らず,医療行為も「費用対効果」の議論を免れないであろう。終末期医療だけではなく,超高齢者に対する高額な手術や,ADLの低下した患者の透析導入など,実施している医師も問題を感じることは少なくない。専門家集団である学会には,率直な議論を期待したい。</p>

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