著者
仁平 千香子
出版者
日本時間学会
雑誌
時間学研究 (ISSN:18820093)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.9-22, 2018

現代において「豊かな生活」というのは「忙しい生活」を意味することが多い。忙しいことは、労働による収入をもとに、消費活動を通して余暇を楽しむ生活への近道とされるからである。そのような忙しい生活が当然のように正当化される時代に、忙しい主人公を描かないことで有名な村上春樹がなぜこれほど世界的人気を博したのかを考えるのが本稿の目的である。忙しさが当然となった社会の成り立ちを振り返ることで、主人公「僕」たちの時間の過ごし方の特異性が浮き彫りになり、またそこから村上の資本主義社会への視座が伺える。

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