著者
金 博男
出版者
日本時間学会
雑誌
時間学研究 (ISSN:18820093)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.39-57, 2019 (Released:2020-05-27)

近代中国における「日曜日」の受容に関しては、これまで文学や歴史学、社会学などの分野において研究が進められてきた。しかしながら、それらの先行研究の大多数は、民国期に重点が置かれたものであり、清末期における「日曜日」の受容についての考察は十分とは言えない。本稿は、清末における一週七日制の名称を検討した上で、清末の新聞『申報』の記事を中心に、休息、娯楽、および犯罪事件といった三つの観点から清末における「日曜日」の受容を考察するものである。
著者
金 博男
出版者
日本時間学会
雑誌
時間学研究 (ISSN:18820093)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.39-57, 2019

近代中国における「日曜日」の受容に関しては、これまで文学や歴史学、社会学などの分野において研究が進められてきた。しかしながら、それらの先行研究の大多数は、民国期に重点が置かれたものであり、清末期における「日曜日」の受容についての考察は十分とは言えない。本稿は、清末における一週七日制の名称を検討した上で、清末の新聞『申報』の記事を中心に、休息、娯楽、および犯罪事件といった三つの観点から清末における「日曜日」の受容を考察するものである。
著者
岡崎 善弘 井邑 智哉 高村 真広 徳永 智子
出版者
日本時間学会
雑誌
時間学研究 (ISSN:18820093)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-7, 2018 (Released:2019-05-01)

夏休みの宿題は短期間で終えることができないため,児童は夏休み前に取り組み方を計画する。本研究は,小学生 (小学4年生~6年生) を対象として,計画した通りに宿題に取り組むことができたのか調査した。宿題に取り組む計画を事前に調査し,長期休暇が明けた後に実際の取り組み方を調べた結果,長期休暇の前半で宿題を終える計画 (前半集中型) は破綻している割合が他の計画タイプよりも高かった。さらに,宿題の取り組み方と夏休み明けのストレスの関連を調べた結果,夏休みの後半から宿題に取り組んだ児童は他の児童よりストレスは高いことが示唆された。
著者
一川 誠
出版者
日本時間学会
雑誌
時間学研究 (ISSN:18820093)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.31-46, 2016 (Released:2017-05-01)

時間に関する知覚過程は、一義的な解のない不良設定問題を解決する過程とみなすことができる。すなわち、時間知覚は、時間進行のペースや事象間の間隔についての確かな情報がないのに、0次元もしくは0.5次元的に得られる諸事象についての知覚情報を一次元的な進行する時間軸上に位置付ける過程と見なすことができる。普段の時間知覚において、何らかの巧妙な方略を用いることによって知覚系はこの不良設定問題に一応の解を与えていると考えられる。本研究では、知覚系がこの不良設定問題解決に用いている方略を理解するために、時間に関する錯視、錯覚の特性を整理した。その上で、進行する時間軸上への諸事象の位置付けという不良設定問題解決のため、知覚系が、処理促進による遅延の短縮や、顕著な情報による引き込み的処理などの方略を用いていることを示した。
著者
野村 直樹 橋元 淳一郎 明石 真
出版者
日本時間学会
雑誌
時間学研究 (ISSN:18820093)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.37-50, 2015 (Released:2017-02-28)

本稿は、時間を存在するもの、すでにあるものとしてではなく、むしろ作られていくもの、つまり、区切り、記述として見ていくことで、どのようにわれわれの時間概念が書き換わるかを説明しようとする。すべての時間が何らかの区切り(punctuation)をもとにするところから、区切るという行為やリズムから時間論を組み立てていく。区切る、リズムを刻む、記すという行為をとおして世界を秩序立てていくという意味で「物語としての時間」という呼び方をする。人間世界、生物の世界のみならず、物理的世界(例、振り子の同期)にも共通してある同期という現象に焦点を当てることで、新たな時間が立ち現れることを、マクタガートの時間論をベースに理論化していく。この時間世界を拡張していく主役は、E系列と呼ばれる時間であり、詩人やアーティスト、宗教家の直観として古来より語られてきたものではあるが、これを科学の枠組みの中に位置づけようとするのが本稿の目的である。相互作用し、同期するものが作る「生きた時間」という視点がもたらす広がりを説明したい。
著者
山城 大地 兵藤 宗吉
出版者
日本時間学会
雑誌
時間学研究 (ISSN:18820093)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.19-32, 2017 (Released:2018-08-01)

我々は目に見えない抽象的な概念である時間の順序をどのようにして捉えているのだろうか。多くの先行研究から,過去―未来や,時間的前―時間的後のような時間順序の概念は空間と深く関わっていることが指摘されている。特に水平左右空間との関わりについては多くの研究からその結びつきが検討されてきており,左から右への書字方向を持つ文化圏においては左―時間的前,右―時間的後の関連を有し,右から左への書字方向を持つ文化圏ではその逆の関連を有していることがジェスチャー表現,反応時間を指標とした心理学実験などで示されてきた。本研究では,複数の書字方向を日常的に使用している日本語話者が,初めて学習した一連の画像刺激の呈示順序を水平左右空間とどのようにして関連付けているのかについて,反応時間を指標とした心理学実験をもとに検討した。その結果,多くの左から右への書字方向文化圏と同様,左―時間的前,右―時間的後の関連パターンが認められた。しかしながら,そのパターンは先行研究と比べると部分的なものであり,使用する書字の文化差による検索方略の違いが関わっている可能性が示唆された。
著者
仁平 千香子
出版者
日本時間学会
雑誌
時間学研究 (ISSN:18820093)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.9-22, 2018 (Released:2019-05-01)

現代において「豊かな生活」というのは「忙しい生活」を意味することが多い。忙しいことは、労働による収入をもとに、消費活動を通して余暇を楽しむ生活への近道とされるからである。そのような忙しい生活が当然のように正当化される時代に、忙しい主人公を描かないことで有名な村上春樹がなぜこれほど世界的人気を博したのかを考えるのが本稿の目的である。忙しさが当然となった社会の成り立ちを振り返ることで、主人公「僕」たちの時間の過ごし方の特異性が浮き彫りになり、またそこから村上の資本主義社会への視座が伺える。
著者
杉原 学
出版者
日本時間学会
雑誌
時間学研究 (ISSN:18820093)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.47-56, 2016 (Released:2017-05-01)
被引用文献数
1

日本において、近代的な暦として太陽暦が導入されたのは1873年の改暦からであり、現在も定時法とともにこれが用いられている。だがこの均質的な時間は、人間を「労働力商品」として交換可能な存在にし、産業社会における人間疎外の問題を生み出している。 一方で、人類にとって最も原初的な暦と言われるのが自然暦である。自然暦は地域ごとの自然と人間の共同性に基づいた「風土的な暦」であり、バーナード・ルドフスキーやイヴァン・イリイチらによって提示された概念を用いれば「ヴァナキュラーな暦」として読み直すことができる。 ヴァナキュラーは「風土的」「土着的」などと訳され、商品の対立概念として用いられる。よって「ヴァナキュラーな暦」としての自然暦の時間は、商品化されない時間を意味する。それは非均質的な時間であり、交換不可能な時間である。地域ごとの風土性に由来する「ヴァナキュラーな暦」としての自然暦は、市場経済によって疎外された人間性を回復する可能性を内包しているように思われる。 本稿では産業社会批判の用語としてのヴァナキュラーの概念を援用し、自然暦を「ヴァナキュラーな暦」として読み直すことで、現代社会における自然暦の意味を改めて問い直したい。
著者
加藤 宗博
出版者
日本時間学会
雑誌
時間学研究 (ISSN:18820093)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.35-43, 2015 (Released:2017-02-24)

我々の身近において時間の一方向性が見られる現象としては、水中にインクが拡散してゆく現象、または波は波源から遠方へ拡がるという一方向のみにしか伝播しない現象等が挙げられる。この中の後者の例は十分に研究が行われていない。本論文では、この波動の一方向性のメカニズムを調べた。波動として電磁波を対象とし、電磁ポテンシャルから導いた電圧および変位電流を電気回路と比較した。その結果、電磁波には、一方向性電気回路であるジャイレータ回路に類似した要素があることを確認した。次に波の1波長間のエネルギーを求めた。その結果1波長の間には、抵抗成分が存在するとみなせる可能性があることを指摘した。以上より、電磁波と一方向性電気回路には類似点があることを指摘できた。
著者
杉原 学
出版者
日本時間学会
雑誌
時間学研究 (ISSN:18820093)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.61-71, 2013 (Released:2017-02-28)

明治以降の近代化とともに、かつて人々が生きた「共有された時間」は「個人の時間」へと置き換えられていった。このことは、人々の時間意識を「未来への関心」へと導いた。現代において、その影響は「未来への不安」として表れている。そこで本稿では、「人間の個人化」と「未来への不安」の関係性から、「現在を生きられなくなった人間」の問題を浮き彫りにする。内閣府の調査によると、およそ70%もの日本人が悩みや不安を抱えて生活しているという。このことは、コミュニティを失った個人が、自己責任において生きて行くことのストレスを表している。このストレスが、未来への不安を増幅させている。こうした傾向は若者の間にも顕著に表れており、自殺の増加にも関係していると考えられる。都市の若者を対象とした調査によると、彼らの多くが将来への不安を抱えているという。そのことが、現在を単なる「貨幣の獲得の手段」に貶めているという現実がある。ここに「疎外」の構造が存在している。もちろんこの構造は若者に限ったものではないことは言うまでもない。これらの論考から、「未来による現在の支配」から抜け出すための方法と、その可能性を模索したい。
著者
立石 欣也 吉越 恆 山本 晴彦 岩谷 潔 金子 奈々恵 山本 実則 原田 陽子
出版者
日本時間学会
雑誌
時間学研究 (ISSN:18820093)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.19-28, 2012 (Released:2017-02-28)

本研究では、2004年に世界遺産に登録された和歌山県の「熊野参詣道」を対象として、小型で安価な焦電型人感センサを用いて、観光客の動態を分析した。人感センサは、観光名所である大門坂および険しい山岳ルートに位置する円座石に設置した。調査は、2010年4月23日から2011年6月16日に実施した。実測値との比較を行い、人感センサによるカウント値を補正した値を、通過人数とした。大門坂は円座石に比べ、通過人数が多く、大型観光バス等を利用して、気軽に世界遺産の雰囲気を楽しむ観光客が多いことが分かった。このように、人感センサは小型で安価であるため、多数の設置が可能であり、地域的な観光客の動態の把握が可能である。
著者
吉田 拓矢
出版者
日本時間学会
雑誌
時間学研究 (ISSN:18820093)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.19-34, 2020 (Released:2021-06-14)

古代日本においては、日蝕を忌避することに昼夜は関係しない、という時間観念があった。日没のため実際に観測できない場合であっても、日蝕とみなされて朝廷政務は止められたのである。つまり、日蝕記事のなかに日本から観測可能であったものが少ないのは、暦官らが誤算を犯したからではなく、はじめから観測できることを想定していないものまで「夜蝕」として予報していたからであった。 このことを踏まえて記事を分析していくと、10世紀までの日蝕予報と暦官らの技能は、次のようにまとめられる。8世紀から9世紀中葉にかけては、予報に誤算がみられないことから、ときの暦官らは的確に計算を進められるだけの技能を有していたことがわかる。しかし宣明暦施行後は、日本に伝えられた暦本に漏れがあったことも影響し、的中率が大幅に低下した。このときに予報精度をしばらく改善することができなかったのは、唐から伝えられた暦術をひたすら墨守しようとする、彼らの姿勢の表れであろう。
著者
矢野 幸介
出版者
日本時間学会
雑誌
時間学研究 (ISSN:18820093)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.113-117, 2021-12-31 (Released:2022-07-01)

私たちは学習・仕事と余暇と休息の時間を使って生活している。つまり,時間は私たちの効用の鍵となる概念である。本稿では,これらの時間で構成される効用のモデルをつくるときに,このモデルは何を説明するのかを考えることにする。初めに,私たちの効用は賃金と余暇時間から得られると本稿では仮定する。このとき,この効用を構成する賃金は,人的資本と労働時間より生じると仮定する。そして,また,この人的資本は,余暇時間と労働時間から生じると仮定する。このようにみることで,労働時間と余暇時間はともに効用に影響を及ぼす結果となる。私たちは,労働時間と余暇時間とからなるこの効用への影響のつりあいをもつ。このとき,労働時間は人的資本を高めたり,労働生産性を高めたりする。このことは,余暇時間が人的資本を高めたり,効用を高めたりするのと等しいことを意味する。