著者
大久保 将貴
出版者
福祉社会学会
雑誌
福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.147-167, 2017

<p>本稿の目的は,介護労働における早期離職率の規定要因を明らかにし,さらに,2009 年10 月より2 年半の時限措置として導入された「介護職員処遇改善交付金」が,早期離職率にいかなる影響を与えたのかを検証することである.</p><p>介護保険制度の創設以来,要介護高齢者が増加の一途をたどる一方で,介護労働者は慢性的に不足しているため,今日の介護労働をめぐる最も大きな問題は人材不足であるとも言われている.</p><p>こうした人材不足の背景には早期離職率の高さがある.今後のさらなる介護労働需要の高まりを考えると,早期離職率の規定要因を解明し,</p><p>「介護職員処遇改善交付金」という過去の政策介入がどれほどの効果をあげたのかを明らかにすることは,持続可能な介護保険制度を運営する上で喫緊の課題である.</p><p>本稿では上記の問題意識に基づき,全国の介護保険サービス事業所を対象とした大規模調査を用いた分析を行った結果,以下の3 点が明らかとなった.</p><p>第1 に,正規職と非正規職では早期離職率の規定要因が異なる.第2 に,早期離職率と離職率では正規・非正規ともに規定要因が異なる.</p><p>第3 に,介護労働者の離職を防ぎ定着を図る目的で2009 年に実施された「介護職員処遇改善交付金」が早期離職率に与えた効果は限定的である.</p>

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