著者
アンドレア デ・アントーニ
出版者
観光学術学会
雑誌
観光学評論 (ISSN:21876649)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.81-93, 2013

本論文は相互作用に着目しながら、「ダークツーリズム」を検討する。フィールドワークによって収集したデータに基づき、供給と需要間の相互作用を検討し、現代京都でダークツーリズムが構築されていく過程を支えるさまざまな関係性を明らかにする。このとき、幽霊が出現するとされる場所(心霊スポット)を訪れる「京都怪談夜バス」ツアー、および「花山洞」という心霊スポットを検証する。まず事例をダークツーリズムの分野の中で位置づけ、アクターネットワーク論を参照しながら、ツアーとそこに関わる人間やモノ(=アクター)の間で相互的に構築されるネットワークを分析する。このネットワークによって、歴史における人間の死についての記憶も、観光客の体験を方向付けるアクターとして構築されると論じる。特に、その記憶と、ツアーで訪れる場所との関係が戦略的であり、語りをつうじて構築されていることに着目する。これはツアーの成功の理由になるが、同じメカニズムがツアーを中止させてしまったことを明確にする。このとき、死についての記憶と場所との間の「距離」(Latour, 2005)という概念を参照することによって、ダークツーリズムの再考をめざす。

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