著者
野澤 直也 中澤 裕貴 立部 将 畠田 将行
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.E-139_2-E-139_2, 2019

<p>【はじめに・目的】</p><p> 回復期リハビリテーション病院(以下,回リハ病棟)の主たる目的に日常生活動作(以下,ADL)の再獲得がある。当院では各患者に対して入院時から10日毎に担当看護師が「しているADL」の評価としてFIMを採点し、平行して担当セラピストが「できるADL」の評価として原則とは異なるが同じFIMの基準で採点をしている。当院回リハ病棟退院時の脳卒中患者の「しているADL」と「できるADL」の差の実態把握を目的とした比較検討を行ったため、若干の考察を加え報告する。</p><p>【方法】</p><p> 対象は2018年1月から3月の間に当院回リハ病棟を退院した脳卒中患者69名のうち、急変に伴い転院となった3名を除く66名(男性36名、女性30名)とした。平均年齢は71.7±11.8歳、平均入院日数は94.9±43.8日、疾患は脳梗塞50名、脳出血13名、クモ膜下出血3名であった。退院時における「しているADL」と「できるADL」のFIMの点数を、運動項目の合計値および階段を除く下位12項目それぞれでWilcoxonの符号付順位和検定にて統計処理した。有意水準は1%とした。なお、下位項目の階段は「できるADL」を「しているADL」として採点しているため除外した。</p><p>【結果】</p><p> FIM運動項目の合計値は「しているADL」の平均点数が72.9±21.6点、「できるADL」の平均点数が75.0±20.6点で有意差を認めた。また、下位12項目に関しては、更衣(下)、トイレ動作、移乗、トイレ移乗の4項目で有意差を認めた。有意差を認めた下位項目それぞれの平均点数は更衣(下)が「しているADL」5.8±1.8点、「できるADL」6.0±1.7点、トイレ動作が「しているADL」5.8±1.8点、「できるADL」6.1±1.7点、移乗が「しているADL」5.9±1.6点、「できるADL」6.2±1.3点、トイレ移乗が「しているADL」5.9±1.6点、「できるADL」6.2±1.4点であった。</p><p>【考察】</p><p> 岩井ら(2015)は入院時、退院時を問わず実行ADLと潜在的ADLの差は常に存在すると考えるのが妥当と思われると報告している。本研究においてもFIM運動項目の合計値より、退院時において「しているADL」が「できるADL」を下回っている傾向が確認された。原因としては下位12項目のうち有意差が認められた、更衣(下)、トイレ動作、移乗、トイレ移乗の4項目の影響が大きいと考えられた。これら4項目はいずれも日常生活の中で転倒が発生しやすい場面であるため、「できるADL」と「しているADL」との間に差が生じやすかったと考えられた。また、更衣(下)とトイレ動作に関しては、動作に必要とする時間との関係からも「できるADL」に比べ「しているADL」で介助量が多くなる傾向があったと考えられた。「しているADL」を「できるADL」により近づけていくにあたっては、有意差の認められたこれら4項目に関して、より差が生じている原因を分析したうえでアプローチをしていく必要性が示唆された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p> 本研究は倫理的側面から個人情報保護に配慮し、個人を特定できない形式で後方的にデータの分析・検討を行った。</p>

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こんな論文どうですか? 当院における退院時回復期脳卒中患者の「しているADL」と「できるADL」の差の検討(野澤 直也ほか),2019 https://t.co/69stbi5ZYw <p>【はじめに・目的】</p><p> 回復期リハビリテーション…
こんな論文どうですか? 当院における退院時回復期脳卒中患者の「しているADL」と「できるADL」の差の検討(野澤 直也ほか),2019 https://t.co/69stbi5ZYw <p>【はじめに・目的】</p><p> 回復期リハビリテーション…

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