著者
田中 敬大 齋藤 剛史 吉村 翔 細沼 栞 堂前 伸 堀田 拓
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.E-189_1-E-189_1, 2019

<p>【はじめに】</p><p> 急性期における脳卒中罹患後の早期離床の有用性については様々な因子の検証が行われている. 先行研究では, 早期の離床は身体機能の向上に大きな影響を与えると重要視されている一方で, 脳卒中罹患後24時間以内の超早期に離床し, 通常群と比較した研究では, 3ヶ月後に良好な転帰を示さなかったとの報告もある. このように脳卒中罹患後の早期離床の是非に関しては統一された見解がない.</p><p> 脳卒中罹患後の歩行に関しては, 早期にリハビリテーション (以下リハビリ) が介入することで有意に歩行を獲得出来たという報告はあるが, 早期に離床することが直接歩行の獲得に有効かどうかの報告はない. そこで本研究は脳卒中罹患後の離床時期による差が, 歩行の獲得に関連するかを検証した.</p><p>【方法】</p><p> 対象は2014年1月1日から2016年12月31日の間, 東京歯科大学市川総合病院脳卒中センターに入院し, リハビリが介入した脳卒中患者724名のうち, 入院期間中に歩行を獲得した176名 (男性115名 女性61名 年齢70±11) と歩行を獲得出来なかった304名 (男性277名 女性127名 年齢74±12) を対象とした. 本研究の歩行獲得はFunctional Independence Measure (以下FIM) の移動の項目の歩行で5点以上とした. 除外基準はくも膜下出血の診断を受けた者, 入院前のFIMの移動の項目の歩行で5点未満の者とした. </p><p> 方法は, 超早期離床群 (脳卒中罹患後24時間以内に離床) , 早期離床群 (脳卒中罹患後24時間から72時間以内に離床) , 離床遅延群 (脳卒中罹患後72時間以降に離床) の各群で歩行を獲得した人数をフィッシャーの正確検定にて群間比較した. また離床時期と歩行獲得の可否を目的変数,Brunnstrom Recovery Stage (以下Br.stage) を説明変数として多変量解析した. また歩行には離床と運動麻痺のどちらが寄与するかを重回帰分析にて解析した. 統計解析にはR (Ver2.4.1)を使用した. </p><p>【結果】</p><p> 離床時期別に比較すると超早期離床群の方が他の2群と比較して有意に歩行を獲得できた割合が高かった (p<0.01) . また全ての離床時期の歩行獲得群と歩行未獲得群でBr.stageを比較した結果, 歩行未獲得群に比べ歩行獲得群の方がBr.stageの値が有意に高かった (p<0.01) . さらに歩行の獲得に離床時期とBr.stageのどちらが強く関連しているか比較した結果, 有意にBr.stageの方が関連した (B=0.68, p<0.01) . </p><p>【考察】</p><p> 本研究より脳卒中罹患後の歩行獲得は離床遅延群よりも超早期離床群が有意に高かったが, 離床時期と運動麻痺の程度を比較すると, 運動麻痺の方が歩行獲得に際し,より関連していることが示唆された. </p><p> 本研究では運動麻痺と離床時期の解析を行ったが, その他の因子についても今後検証していく必要がある.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は東京歯科大学市川総合病院倫理審査委員会 (承認番号Ⅰ17‐55) および東京歯科大学市川総合病院病院長の承認を得た.</p>

言及状況

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CiNii 論文 -  急性期脳卒中後の歩行獲得における早期離床との関連 https://t.co/yLTCP5dAyG

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