著者
中窪 美佐緒 町田 浩樹 小室 美智子 永島 智里 荒井 洋
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.J-63_1-J-63_1, 2019

<p>【はじめに】脳性麻痺者(以下,CP)の粗大運動能力は,一般に6歳から9歳をピークに低下すると知られている.しかし,青年期以降のCPの粗大運動能力の縦断的変化を調べた報告はほとんどない.本研究では,包括的なリハビリテーションを継続的に受けた青年期・成人期CPの粗大運動機能の経年的変化を粗大運動能力尺度(GMFM)を用いて評価し,理学療法の効果について考察する.</p><p>【方法】2015年1月から2018年6月に集中リハビリテーション目的として当院に半年から1年間隔で複数回入院したCP 87名(男57名,女30名)を対象とした.初回入院時年齢は12歳~50歳で,10歳代58名,20歳代22名,30歳以上7名であった.2~4週間の入院中は移動機能,生活動作,コミュニケーション,学習・労働能力の向上あるいは回復を目指して毎日平均2~3時間のリハビリテーションを提供し,あわせて環境整備,自主練習指導を行った.通院可能な67名では外来で1回1時間,年間各12回の理学療法・作業療法を行った.GMFMは入院時に診療の一環として主担当者と熟練した理学療法士が2人で測定したものを,カルテから後方視的に調査した.3回以上入院した場合は,初回値と最終値とを比較した.</p><p>【結果】対象全体のGMFM66の変化は-13.5~19.9(平均1.68±4.40)で,増加62名,低下20名,不変5名であった.両側性痙性麻痺は63名中増加40名,低下10名,不変13名名で,平均2.22±3.91増加した.失調型は3名全てが3以上の増加を,片側性痙性麻痺は4名中3名が5以上の増加を示したが,アテトーゼ型は17名中増加8名,低下6名,不変3名であった.機能レベル別では,歩行群37名(GFMCSレベルI,II)で2.11±4.32,非歩行群50名(GFMCSレベルIII, IV, V)で1.37±4.48,それぞれ増加した.年代別の変化量に明らかな差はなかった.GMFM66の大幅な低下には,青年期の身体の成長,中年期のうつ状態,歩行機会の減少,介後環境の変化など,背景に特定の原因があった.</p><p>【考察】今回の検討では,一般に知られるようなGMFM66の一様な低下はなく,粗大運動能力の維持あるいは増加が認められ,包括的なリハビリテーションの効果と考えられた.ただしアテトーゼ型ではばらつきが大きく,運動機能維持がより困難であることが示唆された.今後,運動機能低下の原因をチーム医療で改善する方法を模索したい.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】使用したデータの研究目的の利用については,匿名化を条件に,入院時に医師から患者本人もしくは保護者に説明し,同意を得た.</p>

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