著者
翁 康健
出版者
北海道社会学会
雑誌
現代社会学研究 (ISSN:09151214)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.1-18, 2018

中国の宗族組織には分散と統合を繰り返すという特徴がある。「房」という構造に基づいて,宗族組織は分散し,また祖先崇拝により統合される。しかし,祖先崇拝は宗族を統合する以外に,宗族を拡張し,宗族の社会的地位を強める機能も有しており,その過程では宗族内部における経済的・政治的な地位の差も同時に強調される。そのため,それらの権力や勢力を持っていない族人はしばしば排除される。それでは,排除された族人はいかに宗族組織との関係を維持するのか,本稿は福建省陳厝村を事例にして,調査・考察を行った。その結果,祖先崇拝における排除問題は,神祇祭祀により緩和されることが示唆された。陳厝村の神祇祭祀においては宗族全体の神「聞太師」と,房レベルの神が共に村落を巡る「遊神賽会」という祭祀活動により,宗族全員が統合される。このように,宗族社会においては,「房」という構造に基づいて,祖先崇拝と神祇祭祀は宗族組織を統合する相補的機能を持つと考察された。現代中国社会において,海外華僑華人との社会関係資本の拡張のため,祖先崇拝と神祇祭祀は重要な二つの経路となっている。従って,改めて祖先崇拝と神祇祭祀の社会的機能を理解する必要ができている。その際に,こういった二つの祭祀儀礼の相互的機能を理解することで,民間信仰の社会的位置を捉える新しい視座を提供することができると考えられる。

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CiNii 論文 -  中国宗族組織と民間信仰:祖先崇拝と神祇祭祀の相補的機能を中心に https://t.co/PijQitDYbK #CiNii

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