- 著者
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畠山 真一
- 出版者
- 学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
- 雑誌
- 尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
- 巻号頁・発行日
- vol.51, pp.15-29, 2019
本研究は,萌えアニメ作品における「声」と「不気味の谷」の関係を分析し,萌えアニメ作品で実現されているリアリズムがどのようなものであるかを明らかにすることを目的としている。萌えアニメ作品で使用される声は,成熟した女性が少女を擬して発する声であり,少女の声が持つ声質が誇張されていることに特徴がある。本研究は,この特性によって,萌えアニメが陥る可能性がある不気味の谷が回避されると主張する。加えて本研究は,少女の日常を高い精度で描く萌えアニメ作品において現実世界ではまず使用されない言語表現が使用されていることを指摘する。その言語表現は,現実世界で使用された場合,その言語表現を発するキャラクターをマイノリティ(松谷(2012)の言う「不思議ちゃん」)として位置づけるものとして機能すると思われるが,萌えアニメ作品では,そのマイノリティが普通の少女として描きだされている。本研究は,この点に萌えアニメ作品の魔術的リアリズムを見出すことができることを指摘する。