著者
畠山 真一
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.29-42, 2014

本論文では,日本のポップカルチャーの根幹をなす「カワイイ」概念を分析し,それが,ロボット工学における「不気味の谷」現象と関係づけられることを主張する。「不気味の谷」現象とは,ロボットが人間に似てくれば,似てくるほど,あるレベルの類似度までは、共感度・親近感が上昇していくが,その類似度が一定を超えると,「不気味」に感じるようになるという現象である。この不気味に落ち込んでいく部分が「不気味の谷」と呼ばれる。本論文では,カワイイが,その不気味の谷の直前に位置するプロダクトに当てはまる概念であることを主張する。
著者
桑原 芳哉
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.31-44, 2018 (Released:2018-07-11)
参考文献数
15

本研究では, 過去2回の調査に引き続き, 2017年時点における公立図書館の指定管理者制度導入状況について網羅的な調査を行い, 近年の動向について分析することを目的とする。調査の結果, 2017年11月現在, 245自治体, 638館において指定管理者により管理運営が行われていることが確認できる。2016年度は新たに22自治体, 74館で指定管理者制度が導入されるなど, 指定管理者制度導入館は増加している。NPO を指定管理者とする図書館は全国で43館に留まるが,地域に根ざした図書館経営を展開する事例も見られ, またNPO 間の交流や情報発信が必要との考えも示された。また, 地元書店による図書館運営の事例も増加し, 地域単位の包括的な図書サービスの可能性につながるものとして注目される。
著者
和田 英穂
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.43-57, 2014

本論はBC級戦犯裁判において多数の有罪判決を出した憲兵のケースについて,中国国民政府の戦犯裁判を中心に考察したものである。本論は戦犯裁判の事例研究でもあり,また戦犯裁判の内容から新しい史実を掘り起こす試みでもある。憲兵の様々なケースから,中国人弁護士から警告されるほど杜撰な裁判があった一方で,当時中国における憲兵が中国人にいかに恨まれる存在であったかを憲兵自身が認めるなど,憲兵の実態を垣間見ることができる。
著者
畠山 真一
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.15-30, 2018 (Released:2018-07-11)
参考文献数
14

本研究は, リアリティ水準と多レイヤー性という観点から, 現実世界と結びついているアニメーション作品を分析し, ロトスコープを使用する作品が持つ「不気味さ」が何に起因するかを明らかにすることを目的としている。Lamarre (2009) が述べるように, アニメーション作品は多数のレイヤーを重ね合わせて虚構世界を創りだすという特質 (多レイヤー性) を持っている。この特質によって, アニメーション作品はそれぞれのレイヤーにおいて異なったリアリティ水準を設定することが可能となっている。本研究では, 多レイヤー性とリアリティ水準という2つの理論的装置がアニメーション作品を分析する際に極めて大きな役割を果たすことを示す。
著者
畠山 真一
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.29-42, 2014-03-31 (Released:2019-02-06)

本論文では,日本のポップカルチャーの根幹をなす「カワイイ」概念を分析し,それが,ロボット工学における「不気味の谷」現象と関係づけられることを主張する。「不気味の谷」現象とは,ロボットが人間に似てくれば,似てくるほど,あるレベルの類似度までは、共感度・親近感が上昇していくが,その類似度が一定を超えると,「不気味」に感じるようになるという現象である。この不気味に落ち込んでいく部分が「不気味の谷」と呼ばれる。本論文では,カワイイが,その不気味の谷の直前に位置するプロダクトに当てはまる概念であることを主張する。
著者
畠山 真一
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.15-29, 2019

本研究は,萌えアニメ作品における「声」と「不気味の谷」の関係を分析し,萌えアニメ作品で実現されているリアリズムがどのようなものであるかを明らかにすることを目的としている。萌えアニメ作品で使用される声は,成熟した女性が少女を擬して発する声であり,少女の声が持つ声質が誇張されていることに特徴がある。本研究は,この特性によって,萌えアニメが陥る可能性がある不気味の谷が回避されると主張する。加えて本研究は,少女の日常を高い精度で描く萌えアニメ作品において現実世界ではまず使用されない言語表現が使用されていることを指摘する。その言語表現は,現実世界で使用された場合,その言語表現を発するキャラクターをマイノリティ(松谷(2012)の言う「不思議ちゃん」)として位置づけるものとして機能すると思われるが,萌えアニメ作品では,そのマイノリティが普通の少女として描きだされている。本研究は,この点に萌えアニメ作品の魔術的リアリズムを見出すことができることを指摘する。
著者
桑原 芳哉
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.15-27, 2015-03-31 (Released:2019-02-16)

本研究では,公立図書館における指定管理者制度導入実態について,網羅的な調査を行い,公立図書館における指定管理者制度の特徴について分析することを目的とする。調査の結果,2014年11月現在,193自治体,469館において指定管理者により管理運営が行われていることが確認できる。2011年度以降は,図書館の管理運営に新たに指定管理者制度を導入する自治体の増加が鈍化する傾向にある。図書館は他の公立社会教育施設と異なり,指定管理者として民間企業が指定される割合が高く,特に図書の納入や書誌データの作成等について実績を有する特定の企業に指定が集中しているという特徴がある。
著者
安倍 素子
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅学園研究紀要編集委員会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:18816290)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.A1-A14, 2018-07-21

平安時代の作品『うつほ物語』には物語本文に「絵解」とよばれる本文が混在している。このため、この作品は絵と深い関係にあったとされる。江戸時代延宝五年(1677)、全巻に挿絵が入った版本が刊行された。この挿絵が、従来の「絵解」とよばれる本文の影響を受けて制作されたものかどうかを検討した。その結果、約4分の1の絵が「絵解」とよばれる本文に関係づけられた。「絵」の制作者が「絵解」に注目した可能性は高い。
著者
曽田 裕司
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.61-70, 2018 (Released:2018-07-11)
参考文献数
12

ピアノ練習の中で, できなかった箇所がふとできるようになる現象を, 本研究では自然科学で言う「相転移」のアナロジーで捉える。この過程を明らかにすることは, 学習者のその後の練習に示唆を与える。そこで, 練習過程の実際を記述するための方法論として, ここでは日常的行為に潜在する微細な実践的方法を描き出すエスノメソドロジーを用いる。本稿は 事例研究に先立ち, その基盤となりうる理論について考察することにより, 研究対象と理論の適合性について確認することを目的とする。
著者
畠山 真一
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.15-29, 2019 (Released:2019-09-07)
参考文献数
21

本研究は,萌えアニメ作品における「声」と「不気味の谷」の関係を分析し,萌えアニメ作品で実現されているリアリズムがどのようなものであるかを明らかにすることを目的としている。萌えアニメ作品で使用される声は,成熟した女性が少女を擬して発する声であり,少女の声が持つ声質が誇張されていることに特徴がある。本研究は,この特性によって,萌えアニメが陥る可能性がある不気味の谷が回避されると主張する。加えて本研究は,少女の日常を高い精度で描く萌えアニメ作品において現実世界ではまず使用されない言語表現が使用されていることを指摘する。その言語表現は,現実世界で使用された場合,その言語表現を発するキャラクターをマイノリティ(松谷(2012)の言う「不思議ちゃん」)として位置づけるものとして機能すると思われるが,萌えアニメ作品では,そのマイノリティが普通の少女として描きだされている。本研究は,この点に萌えアニメ作品の魔術的リアリズムを見出すことができることを指摘する。
著者
田中 孝明
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅学園研究紀要編集委員会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:18816290)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.45-62, 2018-08-04

熊本市は2012(平成24)年4月に政令指定都市へ移行するにあたり,地域包括支援センターの見直しを行うこととした。具体的には,政令市移行に伴う行政区の見直しと連動して,2011(平成23)年6月に成立した介護保険法改正による地域包括支援センターの機能強化を図る一方で,センターの担当圏域の再設定を行い,これまでのセンター設置数を減らしたうえで委託事業者を新たに公募する形をとることにした。しかしながら,センター担当圏域の再設定やセンター数の削減は,①センターと地域住民とのこれまでの信頼関係,②公募制をとるにあたっての評価基準の仕組み,③将来的な人口推計を見据えた地域包括ケアシステム,にとって課題が多いと指摘できる。
著者
小野澤 泰子
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.75-96, 2023-03-31 (Released:2023-08-04)
参考文献数
55

本稿では,緑川ゆき原作のアニメ作品『夏目友人帳』のロケ地である熊本県人吉市を事例として取り上げ,この地域が2008年に作品が放送されて以来,長期間にわたりファンによりアニメツーリズムの聖地になり続けている要因について,地域の特色や取り組みに着目しつつ考察を行った。近年の他のアニメ聖地の場合,作品の描く世界観の再現に注力したテーマパーク化を志向する傾向が見られるが,人吉市の場合,作品で描かれた人吉の自然と社会を未加工のままファンに体験させることに力点がおかれている。『夏目』作品自体が豊かな自然とゆったりとした主人公の日常生活の描写を特色としているが,人吉市の取り組みはそれに沿った形で自然体の地域性を強調している。そうした人吉市のスタンスが『夏目』ファンから支持され,人吉市におけるアニメツーリズムの長期継続に繋がっていると考えられる。
著者
宇野 文重
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.95-108, 2018 (Released:2018-07-11)

本稿では, 明治前期下級審における女性の「雇人」に関する判決44件を素材に, 明治初期の「雇用契約」に対する司法判断について以下のように分析した。訴訟の多くが, 勤務先から逃げ出した被用者の女性に対して使用者側から身柄の取り戻しを求めるものであるが, 裁判所は「人身ノ自由」を奪うことは許されないとして強制的に取り戻すことはできないとし た。女性たちの父や夫の締結した契約は無効とされたが, 債権者に対して金銭賠償の責任は負うとする法理が明治前期下級審ですでに形成されつつあった。
著者
川﨑 孝明 中嶋 弘二 川嶋 健太郎 川口 惠子
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.75-89, 2014-03-31 (Released:2019-02-06)

近年,大学の全入時代に突入し,さまざまな生活課題を抱えた学生に対する支援が急務になっている。そのなかで,本学科では退学防止対策班を組織し,ケースによっては保護者や高校あるいは医療機関との連携を模索しながら寄り添い型支援に取り組んでいる。今後さらにこの支援を進めていくためにも,教員間の共通認識の確立や学生情報に関する連携体制の整備が必要である。
著者
桑原 芳哉
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.45-57, 2019 (Released:2019-09-07)
参考文献数
15

2007年以降,中心市街地に民間商業施設との複合施設として整備された公立図書館を対象として,施設の概要,利用状況,併設施設の特徴及び整備の経緯などについて調査を行った。図書館の施設規模としては1,000㎡未満の小規模な図書館の事例が多いが,4,000㎡以上の大規模な図書館を商業施設の上層階に整備する事例もある。併設されている商業施設としてはスーパーマーケットや書店など図書館との親和性が期待できる業種が特徴的である。既存の大型商業施設の撤退・縮小を受けて,空きスペースを活用する形で図書館整備が行われる事例が多く,特に地方都市において商業施設に代わって公立図書館が「集客」の中核施設として期待されている状況が顕著である。
著者
田口 誠一
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.15-27, 2014-03-31 (Released:2019-02-06)

ボクシング選手が登場する作品を書いたアメリカ作家には,ジャック・ロンドンやリング・ラードナー,アーネスト・ヘミングウェイなどがいる。この論文では3名の作家のそれぞれの短編小説である「一切れのビフテキ」,「チャンピオン」そして「5万ドル」を中心に取り上げ,ボクシングが題材としてどのように扱われているかを考察する。
著者
畠山 真一
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.15-30, 2018

本研究は, リアリティ水準と多レイヤー性という観点から, 現実世界と結びついているアニメーション作品を分析し, ロトスコープを使用する作品が持つ「不気味さ」が何に起因するかを明らかにすることを目的としている。Lamarre (2009) が述べるように, アニメーション作品は多数のレイヤーを重ね合わせて虚構世界を創りだすという特質 (多レイヤー性) を持っている。この特質によって, アニメーション作品はそれぞれのレイヤーにおいて異なったリアリティ水準を設定することが可能となっている。本研究では, 多レイヤー性とリアリティ水準という2つの理論的装置がアニメーション作品を分析する際に極めて大きな役割を果たすことを示す。
著者
福永 美佳
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.A1-14, 2015-03-31 (Released:2019-02-16)

奈良・平安時代に陰陽寮で教科書として使用されていた『五行大義』を手引きとして,本論文は,『竹取物語』の求婚譚がいかに構成されているかを論ずる。先行研究は,五人の求婚者がどの五行の元素を表象しているかを明らかにしようとしていたが,意見の一致を見ていない。このような状況を改善するため,本論文は,『五行大義』こそが,求婚を失敗させる手がかりとなるものであると主張する。本論文では,この観点から,いかにかぐや姫が偽物を見破ったか,そしてなぜ求婚者が破滅したかが論じられる。
著者
山川 仁子 天野 成昭
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.109-116, 2018 (Released:2018-07-11)
参考文献数
4

屋外における拡声放送の情報伝達精度の向上を目指し, 拡声放送において使用される音声言語の特性を明らかにするための基礎的検討として, スキー場の拡声放送における単語の出現頻度, 単語親密度および音素構成を調べた。その結果, スキー場の拡声放送には, 出現頻度が高いが, 単語親密度が低く, 難聴取音素を含む単語が使用されていた。これらの中には, 滑走上の安全に関わる単語や非常時に使用される単語が含まれていることが明らかになった。
著者
畠山 真一
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.2017, no.49, pp.29-42, 2017 (Released:2017-11-13)
参考文献数
19

本論文は,現代日本語の存在動詞イルの成立史とシテイル形式の文法化が緊密に関連していることを明らかにする。現代日本語のイルは,典型的な状態動詞の一つであるが,イルの語源を形成するヰルは,状態動詞ではなくむしろ起立状態から着座状態への態勢変化を意味する主体変化動詞であったと考えられており,イルは,主体変化動詞ヰルではなく,むしろヰルの主体変化結果状態を表現するヰタリから発達してきたと推定されている(金水,2006)。本論文で検討した歴史的なデータは,ヰタリから存在動詞イルへと至る意味変化とテイルの文法化が相互に関連していることを示している。すなわち,近世におけるアスペクト形式としてのシテイル形の確立には,存在動詞イルの成立が反映されていると考えられる。このような議論にもとづき,本論文は,シテイル形が,イルの意味的漂白化(semantic bleaching)に加え,テ形節とイルを述語とする主節からなる複文構造(biclausal structure)が単文化することによって確立すると主張する。