- 著者
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薬師寺 浩之
- 出版者
- 観光学術学会
- 雑誌
- 観光学評論 (ISSN:21876649)
- 巻号頁・発行日
- vol.5, no.2, pp.197-213, 2017
本稿では、カンボジア・シェムリアップ市における孤児院で行われている日本人が参加するボランティアツアーを事例として、孤児院ボランティアツアーにおける演出とパフォーマンスについて考察を試みる。孤児院ボランティアツアーとは、ツアー参加者がボランティアという行為を通して孤児の貧困や不幸という「ダークネス」にまなざしを向け、さらに自身のリアリティを充足する、という一連の行為である。本来なら福祉施設の一形態である孤児院は観光資源の対極に位置付けられるべきものであるが、市場化・観光資源化されて観光者に開放されている孤児院も見られる。ボランティアツアーを受け入れている孤児院では、ツアー参加者がリアリティを充足したり自分の存在意義を再確認したりできるように、様々な演出がツアー催行業者や孤児院運営者によって行われ、さらにツアー催行業者や孤児院運営者の指示のもと孤児はパフォーマンスをしている。さらにツアー参加者自身も孤児院でのボランティア活動中、利他的・博愛的なボランティア活動実践者として相応しい振る舞いをするように自らを演出している。