著者
小森 次郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

<p>2019年10月12日,台風19号の接近により南関東を東京湾へ流れる多摩川(全長138 km)周辺でも豪雨となり,流域内6か所のアメダス観測点ではいずれも24時間降雨量の観測史上最多を記録した.国土交通省の石原水位観測所(河口から27.6 km)と田園調布水位観測所(同13.4 k)では約90年の観測史上最高の水位となり河川の計画高水位を超えた.これにより下流の右岸では東京都調布市・狛江市・世田谷区・大田区が,左岸では神奈川県川崎市多摩区・高津区・中原区・川崎区の15地域で住宅等の浸水被害が発生した(図1).本発表ではこれら地域の現地調査で明らかになった被害の特徴と,そこから考えられる課題について報告する.なお,この調査では発災翌日の10月13日に撮影された国土地理院の航空写真が大いに役立った(2020年1月22日現在,電子国土Webサイトで閲覧可能).</p><p></p><p>【浸水被害の特徴】</p><p></p><p>・浸水の原因は①多摩川につながる樋管からの逆流,②多摩川から支流河川へのバックウォーター現象,③堤防より低い水門を越えた多摩川からの越水,の三つに分類される.</p><p></p><p>・多摩区布田と高津区二子以外の主な浸水域は江戸期の瀬替えを経た多摩川の旧河道の地形に相当する.</p><p></p><p>・多摩川は溝の口の下流側を境に上流は網状流河川,下流は蛇行河川を呈するが(門村(1961)地理科学,1, 16-26),浸水域の広がりかたもこの違いを反映している.</p><p></p><p>【課題】</p><p></p><p>・①の多摩川につながる樋管からの逆流については,記録的な増水の中で水門を開放していた川崎市や調布・狛江境界での河川管理について特に検証が必要である.</p><p></p><p>・現状のハザードマップは,広域の内水氾濫や河川の氾濫による建物被害を示したものであり,今回のような樋管や用水路周辺の局地的な浸水の危険性を理解することはできない.</p><p>・1974年の多摩川水害以降,目立った洪水がなかったことで住民の川への防災意識や土地の成り立ちに関する知識が薄まっていた可能性がある.</p>

言及状況

外部データベース (DOI)

Wikipedia (1 pages, 1 posts, 1 contributors)

収集済み URL リスト