著者
久木 幸治
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.91-106, 2020

<p>短波海洋レーダによる波浪研究の現在までの進展について紹介する。短波海洋レーダが受信する波浪からの後方散乱電波のドップラースペクトルには,波浪を構成している全ての自由波成分が関与している。このため,ドップラースペクトルから波浪スペクトルを推定することが可能である。その推定手法には,半経験的な手法,パラメータ適合による手法,線形インバージョン法,非線形インバージョン法がある。この中で,半経験的な手法が最も広く使われている。半経験的な手法とは,ドップラースペクトルと波浪パラメータとの関係式において未知の係数を経験的に求めることによって波浪パラメータを求める手法である。パラメータ適合による手法は,広ビーム型短波海洋レーダで得られるドップラースペクトルの解析のために開発された。線形インバージョン法は,狭ビーム型短波海洋レーダで波浪スペクトルを求める手法として最もよく知られた手法であり,ドップラースペクトルと波浪スペクトルとの関係式を波浪スペクトルについて線形な式に近似してから,波浪スペクトルを求める手法である。非線形インバージョン法は,日本で最も精力的に開発が進められている手法であり,線形インバージョン法を高度化した手法である。短波海洋レーダによる波浪推定精度を高めるためには,推定手法の高精度化とともに,SN(信号対雑音)比の高いドップラースペクトルを選択する手法の開発が必要である。このことによって, 沿岸域における波浪の高い精度での予報が可能となることが期待される。</p>

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (1 users, 1 posts, 0 favorites)

短波海洋レーダによる波浪研究の進展と課題 : https://t.co/MdHIQG6Bhb

収集済み URL リスト