著者
飯田 一史 中平 真由美
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.286, 2016

はじめに在宅で過ごす重症心身障害児(者)の高齢化、重度化が進む中、短期入所のニーズは年々増加し、当センターでも4年間で登録者数は102人から225人へ増加している。気管切開や呼吸器装着の超重症児から行動障害を伴う動く重症児まで、多彩な状況の方が利用されている。今回、その方々を安心・安全に受け入れるために家族と職員・部署間で情報を正確かつ効率的に伝達、共有する方法に取り組んだので成果を報告する。方法平成26年4月に医師、看護師、支援員、ケースワーカーで構成される短期入所推進委員会を発足させ、以下の点に取り組んだ。(1)入所時の診察から関わる看護師の配置。(2)施設共通のADL表を作成、電子システム化する。(3)短期入所利用中のインシデントリストを作成、カルテに綴じる。(4)利用3日前の家族からの事前連絡を開始。(5)短期入所新聞を月1回発行。結果(1)(2)の取り組みにより収集する情報内容が充実、整理された。(3)の取り組みにより以前のインシデントの確認が容易になり、再発予防に役立った。(4)の取り組みにより事前の体調確認が可能となり、体調不良のまま利用することを防げた。(5)の取り組みにより情報の発信が可能となった。以上の取り組みの結果、生命に関わるアクシデントは平成26年4月以降認めていない。また短期入所中に体調不良となり入院に切り替えた件数は、平成27年度は延べ561件中3件であった。考察体調の変化を来しやすい重症児者を受け入れるためには、個々の情報を職員・部署間で共有することが必須であるが、膨大な情報の共有は困難である。今回情報の共有に重点を置いて取り組んだ結果、ケアの統一ならびにリスク防止につながり、家族との信頼関係の構築につながった。今後の課題は、慢性的な短期入所ベッドの不足と、病棟の空床利用のため感染流行時の利用停止などの問題に加えて、短期入所中のQOL向上にも取り組んでいく必要があると思われる。

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