著者
稲本 由美子 木原 健二 飯田 一史
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.284, 2017

はじめに 重症心身障害児者にとり、「呼吸」を安楽に維持することが生命予後、QOLの向上につながる。呼吸ケアというと、吸引・呼吸器の管理など医療的ケアをイメージするが、姿勢管理、口腔ケア、緊張緩和のための心理的関わりなどのほうが重要である場合も多い。日常生活の中で多職種がそれぞれの専門性を発揮して適切な介助、対応を行うことが重要であると考える。しかし、現状は職種間の知識・技術の格差があり、専門性を発揮した呼吸ケアを実践しているとは言い難い状況である。職員全体の「呼吸」に対する知識の底上げを行うことが重要であると考える。さらに、知識だけでなく、それを実践に活かすためにはOJTは不可欠であり、指導する立場の職員を育てることも重要である。 今回、施設が求めるそれぞれの職種(看護師・支援職・セラピスト)の呼吸ケアにおける役割を明確にすること、「重症心身障害児者の呼吸障害」の基礎的な知識を職種間格差なく持てること、個々の症例に合わせた適切な呼吸ケアを実践できることを目標とし、系統的な「呼吸研修プログラム」の立ち上げに取り組んだので、その経過を報告する。 活動内容 1.「呼吸研修検討会」定例会議1回/月を実施。「呼吸研修プログラム」の内容検討し、計画立案を行う。 2. 研修会の実施・評価 結果 呼吸の仕組み・重症心身障害児者の呼吸障害とその対応・呼吸リハビリの基礎と実際など基本的に知っておくべき知識と技術を得るための「ベーシックコース」計5回と指導的立場を担うための知識と技術を得る「アドバンスコース」計3回を計画・実施した。「ベーシックコース」は対象職員(看護・支援・セラピスト)約140名中、各回約50〜80名参加。「アドバンスコース」は対象者を限定して実施した。 今後の課題 研修内容を「難しい」と感じた職員に対して理解度のチェックとフォローアップ実践に活かすための、職種別知識・技術の研修プログラムの検討
著者
飯田 一史 中平 真由美
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.286, 2016

はじめに在宅で過ごす重症心身障害児(者)の高齢化、重度化が進む中、短期入所のニーズは年々増加し、当センターでも4年間で登録者数は102人から225人へ増加している。気管切開や呼吸器装着の超重症児から行動障害を伴う動く重症児まで、多彩な状況の方が利用されている。今回、その方々を安心・安全に受け入れるために家族と職員・部署間で情報を正確かつ効率的に伝達、共有する方法に取り組んだので成果を報告する。方法平成26年4月に医師、看護師、支援員、ケースワーカーで構成される短期入所推進委員会を発足させ、以下の点に取り組んだ。(1)入所時の診察から関わる看護師の配置。(2)施設共通のADL表を作成、電子システム化する。(3)短期入所利用中のインシデントリストを作成、カルテに綴じる。(4)利用3日前の家族からの事前連絡を開始。(5)短期入所新聞を月1回発行。結果(1)(2)の取り組みにより収集する情報内容が充実、整理された。(3)の取り組みにより以前のインシデントの確認が容易になり、再発予防に役立った。(4)の取り組みにより事前の体調確認が可能となり、体調不良のまま利用することを防げた。(5)の取り組みにより情報の発信が可能となった。以上の取り組みの結果、生命に関わるアクシデントは平成26年4月以降認めていない。また短期入所中に体調不良となり入院に切り替えた件数は、平成27年度は延べ561件中3件であった。考察体調の変化を来しやすい重症児者を受け入れるためには、個々の情報を職員・部署間で共有することが必須であるが、膨大な情報の共有は困難である。今回情報の共有に重点を置いて取り組んだ結果、ケアの統一ならびにリスク防止につながり、家族との信頼関係の構築につながった。今後の課題は、慢性的な短期入所ベッドの不足と、病棟の空床利用のため感染流行時の利用停止などの問題に加えて、短期入所中のQOL向上にも取り組んでいく必要があると思われる。