- 著者
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狩谷 尚志
- 出版者
- 一般社団法人 日本社会福祉学会
- 雑誌
- 社会福祉学 (ISSN:09110232)
- 巻号頁・発行日
- vol.61, no.3, pp.14-27, 2020
<p>本研究は,1940~1950年代にかけて「社会保障制度審議会」を構成した政策主体(アクター)の「自立」言説を再検討することによって,生活保護制度へ「自立」が制度化された背景に,以下の三つの言説上の潮流が存在したことを明らかにした.第一に,労働市場で活動を行い経済的な自助を達成している状態を「自立」と定義する立場.第二に,労働市場もしくは民間社会福祉施設にて,何らかの活動を行っている状態を「自立」としたうえで,個人をそのような場所へと統合する必要を主張した立場.第三に,個人が日常生活を営むうえで必要な所得を備え,特定の施設外での活動を行うことができる自由を有した状態を「自立」と定義した立場である.このような言説分析を踏まえ,「自立」概念の両義性を指摘した.また,各アクターの認識に基づく「自立」概念の歴史的発展と,それらアクターの相互関係による福祉政策の形成という二つの仮説を提示した.</p>