- 著者
-
及川 康
片田 敏孝
- 出版者
- 日本災害情報学会
- 雑誌
- 災害情報 (ISSN:13483609)
- 巻号頁・発行日
- vol.13, pp.66-73, 2015
<p>2013年5月に中央防災会議の南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループは、「南海トラフ巨大地震対策について」と題する最終報告において「地震予知は一般的に困難である」とする立場を表明した。本稿では、このような「予知は困難」とする政府見解が住民にどのように受け止められる可能性があるのかについて、アンケート調査に基づき検証を行った。</p><p>曖昧さを嫌って物事を二律背反的なものとして思考しやすい住民の心理傾向を前提とするならば、多くの住民は"予知の三要素(時期・規模・場所)"を具体化に明確化してくれる情報を望む傾向にあるものと考えられ、そのような要望に直接的に応えてくれる可能性を秘めた従来の地震予知という制度は、原則的には大きな期待とともに受容される可能性が高いと言える。しかしながら、このたびの「予知は困難」とする見解は、そのような住民の感情とは基本的には逆行するものであると言え、ともすると否定的な反応を示す住民が少なくないことも想定され得る。</p><p>インターネット調査という制約下であることから解釈には注意を要するものの、本稿で検証に用いた回答者集団においては、否定的な反応を示す回答者が大勢を占める状況ではなく、肯定的反応と否定的反応の回答者が混在する状況となっていた。また、曖昧さを嫌って物事を二律背反的に捉える心理傾向が強い回答者ほど、「予知は困難」とする見解に対する否定的反応が現れやすいという傾向が示された。</p>