著者
高野 賢一
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.124, no.3, pp.187-191, 2021
被引用文献数
1

<p> 目覚ましく進歩する通信情報機器や通信技術により, 遠隔地に在住する患者や交通弱者の医療機関等へのアクセスビリティの向上, 地域間医療資源差の解消, 勤労世代の労働時間確保などの諸問題を解決できる手段のひとつとして, 遠隔医療に対する注目が高まっていた. そこに, 新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大する状況となり, 患者および医療者双方の感染リスクを軽減させ, いわゆる受診控えを解消させる観点から, 医療インフラとしての遠隔医療の有用性が再認識され, 医療現場での導入が加速しつつある. 2020年4月には厚労省から, オンライン診療における時限的・特例的な通知が発出され, これまでの制限が時限的ではあるが緩和されている. われわれは北海道という地域特性から, 2018年より主として人工内耳装用者を中心に遠隔医療の提供を試みてきた. 本稿では遠隔マッピングや遠隔言語訓練を中心に, その経験を紹介したい. 遠隔マッピングでは, 患者は居住する地元の病院または医院を受診し, 大学病院サイトとオンラインで結びマップ調整を行っている. これまでもおおむね高い満足度が得られてきたが, マッピングソフトによる制限や不満点もあった. 2020年9月に新しいマッピングソフトにより改善が図られたことから, 今後は対象者の拡大とさらなる満足度の向上が期待されている. 遠隔言語訓練では自宅に限らず, 装用者がいる場所とオンラインで結び, 言語訓練を行っているが, 時間的空間的制限が減ることから, やはり満足度は高い. 遠隔医療の普及は始まったところであり, エビデンスの蓄積, 法整備, 診療報酬面などまだ課題は多いものの, 専門家の偏在と不足が特に顕著である聴覚障害診療が抱える諸問題を解決できる手段のひとつとして, 遠隔医療は大きな可能性を秘めており, 正しく発展することで聴覚診療に携わる医療者と患者双方に多大な恩恵をもたらすものと思われる.</p>

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