著者
向井 將
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.92, no.2, pp.260-270, 1989-01-20 (Released:2008-03-19)
参考文献数
31
被引用文献数
6 6

Historically, the concern of wind instrumentalists has been diaphragm control and embouchure.Laryngeal movement during " blow " has been overlooked or neglected by wind musicians. It has been said that musical tone has to be produced by the resonances of the player's air column by opening his larynx during blow.In the present study, fiberscopic observations of the larynx during blow revealed that musical tones were played with adducted vocal cords. Narrowed glottis appeared to control the airflow of the blow. Persons who could not make musical tone blew with open glottis. Vibrato was also made by rhythmic open and narrowing movements of the glottis. The authors concluded that the larynx regulates the airflow of the " blow ". The authors postulated that the embouchure might be important as the receptor of the airflow rather than controlling the movement for "blow".
著者
中屋 宗雄 森田 一郎 奥野 秀次 武田 広誠 堀内 正敏
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.105, no.1, pp.22-28, 2002-01-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
30
被引用文献数
1 1

目的: ライフル射撃音による急性音響性難聴の聴力像と治療効果に対する臨床的検討を行った.対象と方法: ライフル射撃音による急性音響性難聴と診断され入院加療を行った53例, 74耳とした. 治療方法別 (ステロイド大量漸減療法群23耳とステロイド大量漸減療法+PGE1群51耳) と受傷から治療開始までの期間別 (受傷から治療開始まで7日以内の群42耳と8日以降の群32耳) に対する治療効果と聴力改善 (dB) についてretrospectiveに検討した. また, 各周波数別に治療前後の聴力改善 (dB) を比較検討した.結果: 全症例の治癒率19%, 回復率66%であった. ステロイド大量漸減療法群では治癒率17%, 回復率78%, ステロイド大量漸減療法+PGE1群では治癒率24%, 回復率63%であり, 両者の群で治療効果に有意差を認めなかった. 受傷から7日以内に治療を開始した群では治癒率21%, 回復率78%, 受傷から8日目以降に治療を開始した群では治癒率16%, 回復率50%であり, 受傷から7日以内に治療を開始した群の方が有意に治療効果は高かった. 入院時の聴力像はさまざまな型を示したが, 2kHz以上の周波数において聴力障害を認める高音障害群が50耳と多く, 中でも高音急墜型が20耳と最も多かった. また, 治療前後における各周波数別の聴力改善 (dB) において, 500Hz, 1kHzの聴力改善 (dB) は8kHzの聴力改善 (dB) よりも有意に大きかった.結論: 今回の検討で, 受傷後早期に治療を行った症例の治療効果が高かったことが示された. また, 高音部より中音部での聴力障害は回復しやすいと考えられた.
著者
今野 良
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.115, no.2, pp.73-84, 2012 (Released:2012-04-01)
参考文献数
76

子宮頸癌は発癌原因が主にHPV感染であることが明らかにされていた. 50年以上前から行われてきた子宮頸癌検診による二次予防に加えて, HPVワクチン開発・臨床応用によって一次予防も可能になり, 疾患の征圧を視野に入れた予防活動が世界的に繰り広げられている. 一方, 分子疫学の発展により, 子宮頸癌以外の性器肛門癌や頭頸部癌の多くにもHPVが関連していることが認められ, 予防・検診・治療に新しい展開がみられる. 本稿では, 前半にHPVの生物学, 子宮頸癌およびHPV関連疾患の概説を行い, 後半には頭頸部癌とHPVの関わりを解説する.
著者
赤澤 吉弘 明石 愛美 阿久津 征利 三上 公志 深澤 雅彦 春日井 滋 坂本 三樹 肥塚 泉
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.3, pp.224-228, 2015-03-20 (Released:2015-04-17)
参考文献数
15

若年型喉頭乳頭腫は多発性, 再発性で難治なことがあり, 取扱いの難しい疾患である. 今回, 喉頭乳頭腫により気道狭窄を来し, 緊急気道確保を要した症例を経験した. 症例は2歳4カ月の男児で, 1歳頃から嗄声, 1歳6カ月頃から陥没呼吸を認めていた. 前医で重度喘鳴を認め, 喉頭乳頭腫による気道狭窄が疑われ, 救急搬送された. 手術室で気管切開待機のもと, 麻酔科による気管内挿管が行われた. 喉頭は腫瘍で充満し, 声門は観察できなかった. 後日, 全麻下にマイクロデブリッダーを用いて腫瘍を除去した. 病理は乳頭腫で, HPV11 が検出された. 初回手術から早期に再発傾向を示し, 半年間に4回の手術を施行したが腫瘍の制御には至っていない.
著者
後藤 隆史 東野 哲也 中西 悠 松田 圭二 我那覇 章 鈴木 幹男
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.116, no.11, pp.1214-1219, 2013-11-20 (Released:2014-01-16)
参考文献数
10

外耳道外骨腫は, 古くより潜漁夫やサーファー, 特により寒冷な地域でより長い冷水刺激に暴露された者ほど発症率が高く骨増殖も大きいとされている. 今回われわれは, 15年間にわたりサウナに通い, サウナに入った直後の冷水浴を習慣としていた3症例5耳の外骨腫に対して手術を行った. サウナ習慣者の冷水刺激に対する暴露時間は, 職業的に潜水する人やマリンスポーツをする人に比べればはるかに短いと考えられるが, 極端な高温・冷水刺激の反復が外骨腫の発生にかかわった可能性が示唆された.
著者
谷内 一彦 櫻井 映子 岡村 信行 倉増 敦朗
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.112, no.3, pp.99-103, 2009 (Released:2010-06-03)
参考文献数
6
被引用文献数
1

アレルギー疾患に対して抗ヒスタミン薬 (ヒスタミンH1受容体拮抗薬) は即効性のある標準的な治療法である. 日本では抗アレルギー薬として分類されている薬に強力なH1拮抗作用を持つものが多く, 注意を要する. 第一世代抗ヒスタミン薬はイタリアの薬理学者Daniel Bovetにより1930-40年代に最初に開発され, 多くの中枢神経系作用薬 (抗精神病薬や抗うつ薬など) の原型になった. 1957年にBovetはその薬理学的業績によりノーベル医学生理学賞を受賞している. さらにヒスタミン研究領域ではH2受容体アンタゴニスト (胃・十二指腸潰瘍治療薬) を開発したJames Blackがその30年後 (1988年) にノーベル医学生理学賞を受賞している.初期に開発された抗ヒスタミン薬は強力な中枢抑制作用があるために, 1980年代から非鎮静性抗ヒスタミン薬の開発が開始されてきた. 花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患にも中枢移行性の少ない第二世代抗ヒスタミン薬が推奨されているが, 日本では特に欧米と比較して第一世代鎮静性抗ヒスタミン薬やステロイド含有鎮静性抗ヒスタミン薬が使用されることが多く, 欧米人から大変奇異に見られている. ちなみに日本では現在でも成人で20-40%, 小児で80-95%が第一世代鎮静性抗ヒスタミン薬を医師により処方されている. さらに日本ではOTC薬として花粉症薬やかぜ薬に多くの抗ヒスタミン薬が含まれており, しかもテレビや新聞などマスコミでの宣伝が自由で, 一般の方にその危険性を知らせないために事故などに関係することも知られている. 医師や薬剤師は鎮静性抗ヒスタミン薬の危険性を十分に患者などに啓蒙する必要性があり, また処方する場合にはその鎮静作用の有無を十分に検討してから薬剤を選択することが重要である. できるかぎり中枢神経抑制作用が少ない非鎮静性抗ヒスタミン薬を第一選択薬とすべきである. なぜならその効果は第二世代抗ヒスタミン薬の間ではほぼ同じであるからである. 本総説ではヒスタミンの薬理学について最新の考え方を紹介する.
著者
田中 是 菊地 茂 大畑 敦 堤 剛 大木 雅文
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.11, pp.1301-1308, 2015-11-20 (Released:2015-12-11)
参考文献数
35

急性喉頭蓋炎は急速に気道閉塞を引き起こし, 死に至る可能性がある感染症である. 呼吸困難がある症例では速やかに気道確保を行うことは言うまでもないが, 喉頭蓋や披裂部などの腫脹はみられるものの呼吸困難を生じていない症例に対して気道を確保すべきか判断に迷うことが多い. 1998年1月から2014年12月までの17年間に埼玉医科大学総合医療センター耳鼻咽喉科において入院加療を行った急性喉頭蓋炎285例 (男性180例, 女性105例, 平均年齢49.6±16.3歳) についてその臨床像を後方視的に解析した. 咽頭痛は全例にみられ, 呼吸困難感を訴えた症例は62例 (21.8%) であったが, 他覚的に高度な呼吸困難症状を呈した症例は17例 (6.0%) であった. 気道確保を行った症例は27例 (9.5%) であった. また, 喉頭蓋および披裂部の腫脹の程度によって, 急性喉頭蓋炎の重症度を1点から5点まで5段階に重症度スコアとして評価した結果, 他覚的に高度呼吸困難症状を認めた症例および気道確保を要した症例はすべて重症度スコアが4点以上であり, 今後前方視的な検討を要するものの, 重症度スコアは気道確保の適応を決定する上で有用と思われた. さらに, 気道確保を施行した群と施行しなかった群とを比較すると, 前者では有意に初診時の白血球数と体温が高く, 咽頭痛出現から初診までの日数が有意に短かったが, 初診時の血清 CRP 値は両群間で差はなかった.
著者
半田 知宏 三嶋 理晃
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.120, no.7, pp.899-906, 2017-07-20 (Released:2017-08-18)
参考文献数
20

膠原病に伴う肺病変は多彩であり, 間質性肺炎の他に気道病変や胸膜炎, 肺高血圧症などを呈することがある. 間質性肺炎は, 膠原病の予後にかかわる重要な臓器病変である. 病理学的には非特異性間質性肺炎パターンが多く, 特発性肺線維症と比較すると予後は一般に良好である. また, シェーグレン症候群ではリンパ増殖性疾患も併発することがある. 治療に関して, ランダム化比較試験が行われているのは強皮症のみである. 一般にステロイドと免疫抑制剤が使用されるが, 強皮症ではその効果は限られる. 近年特発性肺線維症に用いられる抗線維化薬の効果が強皮症を中心に検討されてきている. また, 治療不応例では肺移植も考慮される. 日常臨床では膠原病の特徴を有しつつも膠原病の診断基準を満たさない間質性肺炎が少なくないため, 現在そのような疾患をどう分類するかについて議論がなされている. それらは現在のガイドラインでは特発性間質性肺炎に含められるが, Interstitial Pneumonia with Autoimmune Features(IPAF) という概念が提唱され, その特徴が検討されている. 膠原病性間質性肺炎の治療に関するデータは十分ではなく, 今後の検討を要する.
著者
齋藤 康一郎
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.117, no.5, pp.614-630, 2014-05-20 (Released:2014-06-20)
参考文献数
146

頭頸部におけるヒト乳頭腫ウイルス (HPV) 感染に関連した疾患の中で, 喉頭乳頭腫は, 特に再発性・多発性の強い, 喉頭気管乳頭腫症 (recurrent respiratory papillomatosis: RRP) と称される症例では手術も多数回におよび, 治療に難渋し, 医師・患者・家族を大いに悩ませる疾患の一つとなっている. 個々の喉頭乳頭腫で経過がまちまちであることも, 事態を複雑化させている. 本疾患は, 100以上の遺伝子型があるHPVの中でも良性型に分類される6型と11型が主としてその発症に関与しているが, その感染源に関しては種々の可能性が報告されている. 小児発症症例と成人発症症例での臨床経過の違いを含め, 疾患の臨床動態に影響する種々の背景因子に関しては, 慢性のHPV感染症という観点からも, 基礎知識として整理し, 把握しておく必要がある. 診断は, 病理組織学的診断によるが, 病変の広がりの詳細な診断には, 特殊光を用いた内視鏡での観察も有効である. 疾患を取り扱うに際しては, 経過中に悪性転化を来す可能性, 腫瘤の好発部位, さらには気管切開に関する考え方も知っておくことが要求される. 決して頻度が高いとはいえない orphan disease であることもあり, 絶対的な治療方法の開発が進まない現状において, 治療の基本は外科的切除であり, 再発・多発症例では補助療法を併用することとなる. 本稿では, 喉頭乳頭腫に関する疫学からHPV感染症としての背景, 診断のコツや疾患とかかわる中での注意点をまとめた. さらに, 外科的治療の基本的な考え方や種々の手技の特徴, 補助療法に関するこれまでの試みと今後の展望まで含めて, 欧米の報告を中心に概説する. さらに, 2006年6月以来, 60症例以上の喉頭乳頭腫の患者にかかわってきた経験をもとに, われわれが現時点で施行可能かつ有効と考え, 実践している, 診断・治療のポイントを挙げる.
著者
山田 弘之 加藤 昭彦 石永 一
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.103, no.1, pp.13-18, 2000-01-20 (Released:2008-03-19)
参考文献数
10
被引用文献数
4 5

目的:早期癌を発見するのが目的の一つである人間ドックにおいて,甲状腺癌発見を目的とした超音波検査の導入が普及してきている.この導入がもたらした結果と当院で発見された甲状腺癌の詳細を検討し,その意義を考察した.対象:1989年から1998年までの10年間に,山田赤十字病院の検診センターで施行した人間ドックにおいて発見された甲状腺結節性病変のうち,手術によって癌であることが確認された78例と,同期間に当科において手術を行ったそれ以外の甲状線癌287例と対象とした.また,ドックによって発見され手術を行った良性疾患26例も検討対象に含めた.方法:ドック群と対象群287例において,手術時年齢,TN分類(なかでもT1とT4について),遠隔転移の有無,性比を比較した.結果:ドック群には44歳以下の症例が24例30.8%含まれ,対象群の60例20.9%に比して高率であった.また,ドック群には微小癌が41例52.6%含まれており,対象群の100例34.8%に比して高率であった.逆にドック群には気管食道など周囲臓器に浸潤した症例が1例1.3%に過ぎず,対象群の21例7.3%に比して低率であった.一方で,ドック群にも遠隔転移を認めた症例が1例あり,対象群の3例1.0%とほぼ同率であった.なお,ドック群には22例28.2%の男性症例が含まれ,対象群の28例9.8%に比して高率であった.結論:ドックで発見される甲状腺癌には若年者が多く,また微小癌が多い一方で,周囲組織特に気管食道などへの浸潤例が少なかったことから,ドック群には予後良好な症例が多いと考えてよい,微小癌の良好な予後を考えると,ドックによって不急の微小癌手術が増えていること,更にドックによって結果的に不要であつた良性疾患手術があったことから,穿刺吸引細胞診など精査の対象とすべき症例を嚴選することが頭頸部外科医に求められる.
著者
中山 健夫
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.113, no.3, pp.93-100, 2010 (Released:2011-02-19)
参考文献数
45

根拠に基づく医療 (EBM) は, 臨床的エビデンスと, 医療者の専門性と, 患者の価値観の統合により, より良い医療の提供を目指すものである. 「エビデンスをつくる」臨床研究は, 想定されるクエスチョンよって, 適切な疫学的研究デザインは異なる. 「ランダム化比較試験によるエビデンスが無ければEBMは実践できない」「ランダム化比較試験を行わないと臨床研究として認められない」という考えは誤解であり, それぞれの目的に沿った臨床研究の手法を採ること, 「現時点で利用可能な最良のエビデンス」を意思決定に慎重に用いることがEBMの基本である. 診療ガイドラインは, 「特定の臨床状況のもとで, 臨床家と患者の意思決定を支援する目的で, 系統的に作成された文書」と定義される. 診療ガイドラインは, エビデンスを現場に伝える役割を担い, エビデンス・診療ギャップの改善に役立つとともに, 患者と医療者のshared decision makingを進める基点となることが期待される.