著者
粕谷 隆宣
出版者
智山勧学会
雑誌
智山学報 (ISSN:02865661)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.223-238, 2020

<p> 鎌倉時代の高僧・明恵上人高弁(一一七三~一二三二)は、その学問の基盤を華厳においていた。華厳宗では『起信論』を非常に重視するため、明恵の著作に『起信論』が反映されるのは当然ともいえようが、正面から扱った研究は少ない。</p><p> そのなかで前川健一氏の論考は、明恵の「人法二空観」に着目された。これは本稿でも検討する重要な項目である。しかし、明恵における『起信論』の全体的波及には、いまだ不明となっている部分も多い。その意識から、ここでは実際の『起信論』本文と比較して研究を進めた。</p><p> その結果、明恵が「名利を離れる」典拠として、『起信論』冒頭にこの記述があったことが確認された。明恵の思想の源流に、この「名利観」は厳然としてあり、それは菩提心から三宝礼拝へと展開するための、根本思想と位置づけられる。</p><p> 名利の解釈は、そのまま人法二無我の証得へと繋がっていき、「菩提心・三宝」を包摂するという、一大真如観へと展開していったとみる。</p>

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粕谷 隆宣 - 明恵の『大乗起信論』受容をめぐって https://t.co/2sRhIHmf3E

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