- 著者
-
安田 亘宏
- 出版者
- コンテンツツーリズム学会
- 雑誌
- コンテンツツーリズム学会論文集 (ISSN:24352241)
- 巻号頁・発行日
- vol.2, pp.1, 2015
巻頭言「ブームで終わらせないコンテンツツーリズム研究」安田亘宏コンテンツツーリズム学会副会長・西武文理大学サービス経営学部教授本学会は2011年に従来の学術目的の学会とは一線を画し、研究、調査、考察はもとより事業化も視野に入れて議論する場、情報交換の場を目指し発足し、5年目を迎える。まだまだ学術的な実績も新たな地域ツーリズムの創出、地域の文化創造と言う想いも十分に達成していないが、会員は100名を超えた。研究者、大学院生、大学生だけではなく、自治体やコンテンツ産業、旅行業、宿泊業、メディア等で実践に係わる方々、様々なコンテンツを愛好する人など予想通り幅広い会員を得られたことが今最大の成果だと感じている。『学会論文集』もVol.2を発刊することになった。その間、研究発表大会やフィールドワークも実践し、学会メンバーによる『コンテンツツーリズム入門』も上梓した。着実に議論の輪が広がり、多様な学問領域、実践の場からの研究が進み始めてきたように思っている。コンテンツツーリズムとは、小説・映画・テレビドラマ・マンガ・アニメ・ゲーム・音楽・絵画などの作品に興味を抱いて、その作品に登場する舞台、作者ゆかりの地域を訪れる観光現象のことで、コンテンツを通じて醸成された地域固有の「物語性」を観光資源として利活用する観光のことである。本学会の研究発表の中でも「物語性」を創り出すコンテンツは前述のものだけではなく、各地で活躍するアイドルやキャラクター、歴史上の人物・事件、妖怪までもが研究対象となり、その広がりが実に興味深い。もう一度、コンテンツツーリズムの定義を議論する時期が来ているのかもしれない。コンテンツツーリズムはツーリズムである以上、人々が自らの意思で楽しむ観光であり、多くの旅行者の体験を促進すること、そしてその経済的効果や社会的効果、文化的効果を地域が享受し地域が活性化することが研究の原点にある。また、地域の文化創造、コンテンツ産業創出の視点も不可欠な要素である。アニメやマンガの「聖地巡礼」が世間から注目される一方、一過性のブームで終焉を迎えてしまった地域も決して少なくない。コンテンツツーリズムはサスティナブルツーリズム(持続可能な観光)の一角に位置しなくては意味がない。コンテンツツーリズム研究もブームで終わらせてはならない。加速するインバウンドの中での日本固有のコンテンツ、海外での同様な観光現象、そもそもコンテンツには国境はない。そんな視座も必要である。多様な人々による様々な領域からのユニークな研究の成果を期待したい。