著者
市川 寛也
出版者
コンテンツツーリズム学会
雑誌
コンテンツツーリズム学会論文集 (ISSN:24352241)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.37-45, 2015 (Released:2021-05-28)

妖怪は、 時に民間伝承として、時に大衆文化の 中で 、様々に転生を繰り返しながら生きた文化として 再創造され続けてきた 。本稿は、そうした妖怪文化の現代的活用の一側面をコンテンツツーリズムの視点から明らかにすることを目的とするものである 。 本論では、事例分析のための枠組みを構築するために、「民俗文化/大衆文化」「既存のコンテンツの有無」という二つの軸を用いて 妖怪文化を活用したツーリズムの類型化 を試みた 。例えば、鳥取県境港市は水木しげる の キャラクターを活用しているという点において「大衆文化―既存のコンテンツあり 」の事例として位置付けられる。 従来の妖怪文化の活用は、大衆文化由来にせよ民俗文化由来にせよ、地域を象徴する「モチーフ」として用いられることがほとんどであった。そうしたキャラクターを消費することでツーリズムも成立していたわけだが、そこには本来の妖怪文化の担い手としての地域住民の関与はほとんどな い 。これに対して、近年では、地域住民が地域の妖怪文化を発掘、再創造するような事例が見られるようになった。そこでは、地域を解釈し、語り、楽しむための表現ジャンルとして妖怪が位置づけられている。 本論では 、 妖怪伝承の創造モデ ルを組み込んだプロジェクトとして NPO 法人千住すみだ川との協働事業として 《隅田川妖怪絵巻 PROJECT 》を構想し、その実践を通して妖怪文化の つくり手 としての地域住民の語り を引き出すプラットフォームの一つの形を提案した 。本稿の後半部では、その第一段階として 2014 年 3 月に公開したまち歩き用アプリケーション「南千住百物語」について、地域の物語が再創造されていく過程を 辿る 。 この実践の検証を通してコンテンツツーリズムのジャンルとしての妖怪に光を当てることにより、地域に根差した物語づくりの手法を開発することができると考える。
著者
市川 寛也
出版者
コンテンツツーリズム学会
雑誌
コンテンツツーリズム学会論文集 (ISSN:24352241)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.37-45, 2015

妖怪は、 時に民間伝承として、時に大衆文化の 中で 、様々に転生を繰り返しながら生きた文化として 再創造され続けてきた 。本稿は、そうした妖怪文化の現代的活用の一側面をコンテンツツーリズムの視点から明らかにすることを目的とするものである 。本論では、事例分析のための枠組みを構築するために、「民俗文化/大衆文化」「既存のコンテンツの有無」という二つの軸を用いて 妖怪文化を活用したツーリズムの類型化 を試みた 。例えば、鳥取県境港市は水木しげる の キャラクターを活用しているという点において「大衆文化―既存のコンテンツあり 」の事例として位置付けられる。従来の妖怪文化の活用は、大衆文化由来にせよ民俗文化由来にせよ、地域を象徴する「モチーフ」として用いられることがほとんどであった。そうしたキャラクターを消費することでツーリズムも成立していたわけだが、そこには本来の妖怪文化の担い手としての地域住民の関与はほとんどな い 。これに対して、近年では、地域住民が地域の妖怪文化を発掘、再創造するような事例が見られるようになった。そこでは、地域を解釈し、語り、楽しむための表現ジャンルとして妖怪が位置づけられている。本論では 、 妖怪伝承の創造モデ ルを組み込んだプロジェクトとして NPO 法人千住すみだ川との協働事業として 《隅田川妖怪絵巻 PROJECT 》を構想し、その実践を通して妖怪文化の つくり手 としての地域住民の語り を引き出すプラットフォームの一つの形を提案した 。本稿の後半部では、その第一段階として 2014 年 3 月に公開したまち歩き用アプリケーション「南千住百物語」について、地域の物語が再創造されていく過程を 辿る 。 この実践の検証を通してコンテンツツーリズムのジャンルとしての妖怪に光を当てることにより、地域に根差した物語づくりの手法を開発することができると考える。
著者
丹羽 真人
出版者
コンテンツツーリズム学会
雑誌
コンテンツツーリズム学会論文集 (ISSN:24352241)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.53-60, 2014

近年では、通称「台湾コミケ」と呼ばれる台湾同人誌即売会に日本から参加する若者が増えてきたようである。本研究は、何が日本からの参加者を惹きつけるのか、現地を訪れ、台湾における同人誌即売会を中心にそれらの特徴を分析し、オタクツーリズムの事例を考察し、今後のコンテンツツーリズム 企画例を提示する。
著者
毛利 康秀
出版者
コンテンツツーリズム学会
雑誌
コンテンツツーリズム学会論文集 (ISSN:24352241)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.34-46, 2018 (Released:2021-09-01)

本稿はコンテンツツーリズム領域における心理的・社会的知見の積み増しを目指して、その担い手であるファンの愛好行動に着目し、「フロー理論」およびその応用モデルの検討を通して、コンテンツツーリズムと社会の持続的な発展に寄与する「ファンのあり方」および地域が果たしうる役割について考察するものである。 フローとは、自己の没入感覚を伴う「楽しい経験」を指す。熱狂的なファンはコンテンツツーリズムの主導的な担い手になっているが、それは愛好対象に「はまっている」ことが「楽しい経験」としてフローの状態にあるからと説明することが可能である(ただし「はまる」ことは依存性の問題もはらんでいる)。 近年、愛好対象である「人物」の移動に合わせて旅行するファンツーリズムの研究が進んでおり、コンテンツツーリズムにもその影響が及びつつある。それは「場所」(ロケ地など)の影響をあまり受けない旅行形態であり、ファンと地域の人々との間で交流が生まれるというコンテンツツーリズムの特徴を相殺してしまう。そのような状況であるからこそ、作品にはまり過ぎず、依存し過ぎない、自立した「ファンのあり方」を模索しつつ、ファンと地域の人々が交流することによるメリットを再確認し、積極的に取り組んでいくべきではないかと考える。
著者
中村 容子
出版者
コンテンツツーリズム学会
雑誌
コンテンツツーリズム学会論文集 (ISSN:24352241)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.79-88, 2018 (Released:2021-09-01)

山梨県では、1956年に観光事業振興5ヵ年計画を立て、戦国武将武田信玄の観光活用を開始した。高度経済成長期の最盛期の1969年に、大河ドラマ「天と地と」が放映されると、同年に武田信玄の銅像の建立、放映後の1970年に「信玄公祭り」が創作され、これらは観光客の増加に拍車をかけることになった。その反面、武田信玄関連の史跡の荒廃が問題視された。 「武田信玄」放映に際しては、バブル経済の好景気を背景に、大河ドラマのロケ地建設や武田信玄関連史跡の整備が行われた。しかし、放映後の観光客数は放映前の数値に戻った。また,観光客によるゴミ投棄や違法駐車など地域住民に対する迷惑行為がみられた。そして、「風林火山」は、甲府市中心商店街の活性化を意図した観光客誘致の新たな取り組みがみられた。 山梨県を舞台とした大河ドラマ3作品は観光活用に寄与しており,そこには大河ドラマの作品内容の違いや当時の社会情勢が反映されており、個々に異なる観光活用を行ったといえる。
著者
貝沼 明華
出版者
コンテンツツーリズム学会
雑誌
コンテンツツーリズム学会論文集 (ISSN:24352241)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.49, 2016 (Released:2021-06-04)

マンガやアニメ・ゲームのキャラクターに扮する「コスプレ」を楽しむ「コスプレイヤー」と呼ばれる人たちがいる。「コスプレイヤー」の目的は、好きな作品やキャラクターへの愛情を自らの身体を用いて表現することであり、それは創作意欲を満たすこととなっている。そのため、「コスプレイヤー」にとって場所は撮影するところではなく、創作活動の場という意味を持つ。創作活動の場は、物語世界に近いほどコミュニティ内での評価が上がり、再現度の高い「コスプレ」写真が共感されることで、「コスプレイヤー」は作品に対する認証欲求が満されることとなる。 「コスプレイヤー」の日常性をそぎ落とし、物語性の高い場所を選択する動きは、現代社会で希薄になった「ハレ」の感覚を取り戻す作用を示している。「コスプレ」は演じ手の自意識、外見ともに非日常的なため、観覧者をも巻き込んで「ハレ」の世界を演出する。また、愛知県一宮市と彦根城の事例から、地域の特色と「コスプレ」が結びつくことで、若者と地域住民、観光客の交流の手段としての効果が期待できるといえる。
著者
毛利 康秀
出版者
コンテンツツーリズム学会
雑誌
コンテンツツーリズム学会論文集 (ISSN:24352241)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.13-23, 2017 (Released:2021-08-27)

本稿は、コンテンツツーリズム領域における歴史的・社会的知見の積み増しを目指して、絵葉書のメディア的な機能に着目し、観光資源としての分類法を確認しつつ、絵葉書が近代観光の発達に果たした役割、特にコンテンツツーリズムの発達に及ぼした影響に関する再評価を試みた。 コンテンツの意味するところは幅広いが、観光資源としてのコンテンツという視点から見た場合、「地域イメージと結びつき、その地域を訪れる動機となる情報内容」が相当し、それは小説や映画・ドラマなどのオリジナル作品(一次コンテンツ)、作品を二次利用した無形・有形の関連物(二次コンテンツ)に分類することが出来る。さらに、関連する記事、批評、評判情報、ファンの意見交換などのコミュニケーション活動全般もコンテンツと見なすことが可能であり(三次コンテンツ)、この3種に分類されるコンテンツ群はいずれもコンテンツツーリズムを発達させる重要な要素となる。 ここで、コンテンツとしての絵葉書に着目すると、絵葉書は画像情報とともに信書を伝達出来るメディアであり、パーソナルメディアとしてはもちろん、画像情報を広く拡散するマスメディアとしての側面も有しており、特に黎明期にはその傾向が強かった。それ自体がコンテンツとしての性格を帯び、有力な観光資源にもなっている。 本稿では、主に戦前期から戦後にかけての熱海・那須塩原(金色夜叉)、下田(唐人お吉)、ハルビン(ハルピン見物)の絵葉書を事例として検討を行った。作品のモデルとなったそれぞれの地域において風景写真の絵葉書が大量に制作され、近代観光の体験を共有するメディアとして流通していたが、それに加えて作品世界を表現した絵葉書や作品のモデル地をあしらった絵葉書が作られ、さらには地域イメージを表象したオリジナル作品と呼ぶべき絵葉書も作られていた。すなわち絵葉書は、作品世界の創造(一次)、作品世界の二次的表現やモデル地の表現(二次)、関連コミュニケーション(三次)という、コンテンツの類型の全てをカバー出来るメディアであり、コンテンツツーリズムの発展に寄与するメディアでもあったと再評価することが可能である
著者
楠見 孝 米田 英嗣
出版者
コンテンツツーリズム学会
雑誌
コンテンツツーリズム学会論文集 (ISSN:24352241)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.2-11, 2018 (Released:2021-09-01)
被引用文献数
1

本研究では、作品舞台の旅における旅行者の物語への没入感に、旅行者の個人差特性、訪問時の感情がどのように影響するのか、あわせてアニメ、TVドラマ、映画、小説に差異があるかを心理学的に検討した。作品舞台の旅の経験をもつ、全国の16-79歳の男女市民800人にインターネット調査を行った。その結果、個人差特性としての懐かしさポジティブ傾向性と想像性が、旅における既知感による懐かしさや感動を喚起して、作品への没入感を深めることが明らかになった。コンテンツ間の差異に関しては、アニメの聖地巡礼は、年齢層が20-30歳代で、旅行前・中・後ともネットへのアクセスなどにおいて能動的で、感動も大きい。一方、小説の聖地巡礼は、年齢層は50-60代とやや高く、訪問時の既知感が他のコンテンツに比べて低い。したがって、訪問時における場所への既知感が高いことが没入感と関連する。
著者
安田 亘宏
出版者
コンテンツツーリズム学会
雑誌
コンテンツツーリズム学会論文集 (ISSN:24352241)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1, 2017

先日、「新選組のふるさと」と呼ばれる、東京都の多摩地域南部の日野市に久し振りに訪れてみた。江戸から日野までは十里(約40㎞)、「日野宿」はかつて甲州街道の宿場町として繁栄していた。新選組の副長として活躍した土方歳三や井上源三郎の出身地であり、近藤勇、沖田総司らが剣術の腕を磨いた天然理心流佐藤道場があった地である。新選組ゆかりの史跡、施設は多く、「新選組のふるさと歴史館」、都内で唯一残る江戸時代に建てられた本陣建物である「日野宿本陣」や「土方歳三資料館」「井上源三郎資料館」、土方歳三の墓所「石田寺」、歳三の菩提寺「高幡不動尊」などがある。ふるさと歴史館のガイドの方に聞いたところ、日野への来訪者の多くなったのは2004年に放送されたNHK大河ドラマ『新選組!』からであること、最近は若い人が多く訪れるようになった、それはアニメやゲームの影響らしいこと、昨年あたりより外国人が増えてきた、英語でのガイドが必要なので勉強会を始めている、とのことであった。「土方歳三資料館」は第1・第3日曜日のみの開館で、筆者もその開館日に訪れた。それぞれの史跡、施設には年配者から若いカップル、グループ、外国人まで多くの観光客で賑わっていた。この賑わいは、歴史文化を訪ねる一般的な観光現象であるとも言えるが、そこにはコンテンツが影響しているようである。特に、歴史上の人物と言うよりも、様々なコンテンツでスターとして登場する土方歳三が生まれ育った「聖地」でもあるようだ。 それでは、日野を訪れる動機を創ったコンテンツは一体どんなものなのだろう。小説では、司馬遼太郎の『新選組血風録』、『燃えよ剣』、池波正太郎の『幕末新撰組』、浅田次郎の『壬生義士伝』等々、おそらく新選組をテーマにした小説は100以上あるだろう。映画もまた多い。片岡千恵蔵主演の『新選組』(1958年)から『幕末純情伝』(1991年)、ビートたけし主演の『御法度』(1999年)等々、時代のスターが新選組を演じている。テレビドラマも強烈である。『風雲新選組・近藤勇』(1961年)以降毎年のようにドラマ化されている。NHK大河ドラマ『新選組!』(2004年)は話題を呼んだ。舞台でも新選組は題材になっている。マンガも、近年の『アサギロ 〜浅葱狼〜』(2009年)など数多い。アニメも、『薄桜鬼』(2010年)、『幕末Rock』(2014年)などがある。ゲームも、ウォーシミュレーションゲーム『新撰組』(1980年代)から始まり、『薄桜鬼』など多数有る。それぞれのコンテンツが各世代に大きな影響を与えているようだ。しかも、ひとつの作品ではなく複合的に接触して来訪の動機が醸成されているとも考えられる。この日野で起こっている観光現象は「マルチ・コンテンツツーリズム」と呼んでもいいかもしれない。日本にはこのようなデスティネーションが他にもありそうである。
著者
岩崎 達也
出版者
コンテンツツーリズム学会
雑誌
コンテンツツーリズム学会論文集 (ISSN:24352241)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.2-14, 2014 (Released:2021-05-28)

個人の想いによってツアー行動が起動する感性主導のツーリズムが、近年盛んになっている。本論文では、憧れの人を追って日本中を駆け巡るツーリズムを観光社会学の概念を援用しながら、消費者行動論の枠組みにおいて検証した。対象となる女性たちは、憧れのグループを見るために何度も各地のコンサートに旅立ち、コンサート後に、一緒に行った友人や現地の仲間たちと情報交換をかねた食事会(「反省会」)を行う。そして翌日、周辺観光をして帰路につく。多くの時間と費用とエネルギーを要するが、そういった行動には、彼女たちの憧れの対象に対する熱い「ロマン主義的まなざし」が存在する。 検証の手段としては、実際にジャニーズのグループを追いかけている7名の20-40歳代の女性たちにインタビュー調査を行った。そこから得た行動や心の動きを分析することで、憧れの対象を追うツーリズムの行動形態と行動モデルの検証、提示を行った。 憧れを追うツーリズムの行動形態は、コンサートという目的に向かって出発地と目的地を往復する「ピストン型」と、そのコンサートの移動地を追いかけて巡るという行動が合体したものである。それを「サーキット型」と命名し、提示した。 そして、消費者行動理論に基づく検証としては、エイゼンとフィッシュバイン(の「期待と価値のモデル」が、本論文のテーマとするツーリズムに合致すると判断し、「サーキット型ツーリズム」の循環モデルの提示を行った。そこでは、ツアー後の評価、確信と仲間との情報交換が、個人の態度や主観的規範にフィードバックされ、次のツアーへの継続を促すことを付加するモデルとした。これまでのツーリズムのように「場所」を主たる目的として消費するのではなく、生きている「人」が主たる目的であり、場所は副次的なものとして消費されるツーリズムである。その検証・分析により、新たなツーリズムへの知見を示すとともに、観光実務へのインプリケーションとした。
著者
中村 忠司
出版者
コンテンツツーリズム学会
雑誌
コンテンツツーリズム学会論文集 (ISSN:24352241)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.2-12, 2015 (Released:2021-05-28)

一般的に旅行は、メディアの影響を大きく受ける。なぜなら、行ったことのない場所に対する知識は旅行者にはないため、伝える側のメディアとの間に大きな情報格差が生まれるためである。特にテレビに代表される映像メディアは、訪れる場所の選択と評価の基礎知識さえ消費者に与えてしまう。 受入地域の側では、特に際立った観光資源のない地域においても、アニメで取り上げられたために大勢の若者が集まるアニメ聖地巡礼の事例や、毎年放送される NHK大河ドラマや朝の連続テレビ小説 の舞台地への旅行者が放送年に増加することから、積極的に番組の誘致に乗り出す自治体も現れている。しかしながら、放送翌年に一気に観光客数が減少する例もあり、一過性の観光誘致のマイナス面を指摘する声も出ている。地域にとっては「地域のファン」になって何度も訪れてもらい、地域との関係性を持続してもらうことが重要である。 本研究の目的は、コンテンツが誘発する旅行者行動がどのようなものであるかを明らかにすることである。研究手法は、一般消費者を対象にしたインターネットによる定量調査を採用した。 調査の結果、①コンテンツツーリズムには、作品と対象地域の間でのループ型の旅行者行動があること、②「能動型確認行動」「受動型確認行動」「場所型確認行動」の 3種類のタイプの観光行動があることがわかった。 得られた結果から地域に対し、「利用者のニーズに合わせた受入体制の整備」と「旅行者の観光行動タイプに合わせた PR の展開」についての提言を行った。
著者
岩崎 達也 大方 優子 津村 将章
出版者
コンテンツツーリズム学会
雑誌
コンテンツツーリズム学会論文集 (ISSN:24352241)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.12-24, 2018 (Released:2021-09-01)

本研究は、アニメ聖地巡礼に見られる持続性に焦点をあて、巡礼者のその地へのリピート訪問行動という視点から消費者行動概念のフレームを用い分析を行った。熊本県人吉市におけるアニメ『夏目友人帳』の聖地巡礼者を対象とした調査から、聖地巡礼旅行者の行動メカニズムとして、彼らの行動はアニメ作品への興味、愛着により生起し、その行動の過程で関心の対象がアニメ作品から聖地が存在する地域そのものへと波及していき、その結果として再訪行動が引き起こされることが示された。このような旅行者一人一人のリピート訪問行動が、アニメ聖地巡礼による地域誘客の持続性につながっていると結論付けることができた。
著者
清水 麻帆
出版者
コンテンツツーリズム学会
雑誌
コンテンツツーリズム学会論文集 (ISSN:24352241)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.47-57, 2018 (Released:2021-09-01)

本論文では、コンテンツツーリズムにおいて、聖地への訪問回数に影響を及ぼす要因が聖地再訪と地域の人を含めた地域文化が要因であることを重回帰分析から明らかにしている。本研究の背景には、近年、コンテンツツーリズムが地域の活性化の1つとして自治体から注目され、多くがそれに関連した政策や取り組みを実施しているが、実際には試行錯誤していることが挙げられる。自治体はコンテンツツーリズムに関する知見がほとんどないため、観光振興を持続するための施策や取り組みもイベントなどの一過性のものになっているのが現状である。近年ようやくコンテンツツーリズムが学術的に研究され始め、その成果の蓄積が少ないことも1つの要因である。 そこで、本研究では、コンテンツツーリズムの再訪要因を明らかにする。その方法は、水泳青春アニメの「Free!」の舞台である鳥取県岩美町を研究対象とし、そこに再訪している人達に対するアンケート調査の結果を分析する。以下、第2節では、先行研究の整理を通じて再訪要因を検討する。第3節では、本研究の分析方法を概説し、第4節では、分析結果より、本事例におけるコンテンツツーリズムの特性と再訪要因を論考する。最後に、再訪要因から考察したコンテンツツーリズムの地域の活性化のあり方について言及する。
著者
陸 善
出版者
コンテンツツーリズム学会
雑誌
コンテンツツーリズム学会論文集 (ISSN:24352241)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.58-69, 2018

2016年に公開された日本の劇場版アニメ「君の名は。」は2017年1月、韓国で公開されると360万人を超える観客を動員し、大ヒットとなった。そして多くの韓国ファンがアニメの舞台となった地域をめぐる、「聖地巡礼」に参加した。では、なぜ韓国でこのような動きが生じたのだろうか。韓国の国産アニメーションとマンガを中心にコンテンツ産業の現状を調査・分析すると、韓国のマンガ業界とアニメーション業界はそれぞれ独立して発展してきたことが分かる。マンガはドラマや映画などの2次創作物として制作されることが多く、それに対してアニメーション業界は個性や芸術性を強調した作品で国内外に高い評価を受けている。こうした特性のもと、地域活性化のためにマンガやアニメーションを活用する取り組みが始まりつつあり、コンテンツツーリズムとの新たな関係が生まれていると考えることができる。そこで本稿では、韓国でコンテンツツーリズムを促すためには作品のアイデンティティーの確立とターゲットを確実に設定することはもちろん、コンテンツツーリズムの概念を整備し、具体的な政策を展開していく必要がある点に注目していく。
著者
安田 亘宏
出版者
コンテンツツーリズム学会
雑誌
コンテンツツーリズム学会論文集 (ISSN:24352241)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1, 2015

巻頭言「ブームで終わらせないコンテンツツーリズム研究」安田亘宏コンテンツツーリズム学会副会長・西武文理大学サービス経営学部教授本学会は2011年に従来の学術目的の学会とは一線を画し、研究、調査、考察はもとより事業化も視野に入れて議論する場、情報交換の場を目指し発足し、5年目を迎える。まだまだ学術的な実績も新たな地域ツーリズムの創出、地域の文化創造と言う想いも十分に達成していないが、会員は100名を超えた。研究者、大学院生、大学生だけではなく、自治体やコンテンツ産業、旅行業、宿泊業、メディア等で実践に係わる方々、様々なコンテンツを愛好する人など予想通り幅広い会員を得られたことが今最大の成果だと感じている。『学会論文集』もVol.2を発刊することになった。その間、研究発表大会やフィールドワークも実践し、学会メンバーによる『コンテンツツーリズム入門』も上梓した。着実に議論の輪が広がり、多様な学問領域、実践の場からの研究が進み始めてきたように思っている。コンテンツツーリズムとは、小説・映画・テレビドラマ・マンガ・アニメ・ゲーム・音楽・絵画などの作品に興味を抱いて、その作品に登場する舞台、作者ゆかりの地域を訪れる観光現象のことで、コンテンツを通じて醸成された地域固有の「物語性」を観光資源として利活用する観光のことである。本学会の研究発表の中でも「物語性」を創り出すコンテンツは前述のものだけではなく、各地で活躍するアイドルやキャラクター、歴史上の人物・事件、妖怪までもが研究対象となり、その広がりが実に興味深い。もう一度、コンテンツツーリズムの定義を議論する時期が来ているのかもしれない。コンテンツツーリズムはツーリズムである以上、人々が自らの意思で楽しむ観光であり、多くの旅行者の体験を促進すること、そしてその経済的効果や社会的効果、文化的効果を地域が享受し地域が活性化することが研究の原点にある。また、地域の文化創造、コンテンツ産業創出の視点も不可欠な要素である。アニメやマンガの「聖地巡礼」が世間から注目される一方、一過性のブームで終焉を迎えてしまった地域も決して少なくない。コンテンツツーリズムはサスティナブルツーリズム(持続可能な観光)の一角に位置しなくては意味がない。コンテンツツーリズム研究もブームで終わらせてはならない。加速するインバウンドの中での日本固有のコンテンツ、海外での同様な観光現象、そもそもコンテンツには国境はない。そんな視座も必要である。多様な人々による様々な領域からのユニークな研究の成果を期待したい。
著者
内川 久美子
出版者
コンテンツツーリズム学会
雑誌
コンテンツツーリズム学会論文集 (ISSN:24352241)
巻号頁・発行日
vol.3, 2016

近年「パワースポット」という言葉を見聞きする様になり、新聞やテレビに代表されるメディアでもよく登場する。2010年の全国紙3紙に掲載されたパワースポットの記事は実に264回に及び年々増加傾向にあり、現在ではパワースポットブームと呼ばれている。パワースポットは地域資源の役割を為し新しい観光を創出し、まちに賑わいをもたらす地域活性化が期待出来る側面がある。その一方、パワースポットとはどの様な意味を持ち、どの様な場所かといった学術的研究は殆ど見当たらない。前述のパワースポットの記事の分析から、パワースポットは社寺、自然、御利益がある場所他に大きく分ける事が出来る。中でも社寺をパワースポットと捉えている事が多い。本研究ではパワースポットと呼ばれている社寺をパワースポット社寺と呼称し着目して、社寺という特有の場に参詣者は何をしに行くのか、参詣の折、どの様な行動をするのかについて考察を行う。現在、代表的な社寺参詣として初詣を挙げる事が出来る。研究方法として初詣の人出者数全国上位10社寺と比較する為、その中から代表的なパワースポット社寺に実地調査を行った。その結果、初詣が正月三が日に人出が集中するのに対し、パワースポット社寺へは平日にも幸せを祈願する女性や若い人のマイルドな感覚の参詣が目立っていた。また初詣が参拝後、おみくじや絵馬等の授与品売り場に寄る位で境内を散策する事は殆どないがパワースポット社寺では本殿以外の場所、たとえば社寺隣接の入場料を支払う場所であってもそこに向かい、幸せを願い、縁結び等の御利益があるとされる何がしかの娯楽性を伴った体験をする。さらには携帯電話やスマートフォンで写真を撮り、直ぐにその場からSNS等で参詣者が情報発信する行動形態が読み取れた。これらによりパワースポット社寺へのファンやリピーターが増え、賑わい創出に繋がっていると考えられる。