著者
水谷 仁
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.1_223-1_245, 2020

<p>本稿は、マックス・ヴェーバーの帝国主義論について多角的に考察することを主な目的とする。先行研究において彼の帝国主義論は、ヴェーバーの国際政治思想におけるひとつの軸である、「世界政策」 (ヨーロッパにおけるドイツの大国としてのプレゼンスの追求) の延長上に位置づけられている。しかしヴェーバーは、グローバリゼーションという彼の生きる時代のドイツが直面した国際政治的な状況を視野に入れて帝国主義を論じ、ドイツが 「世界政策」 を保持し得なくなった後も、帝国主義について言及した。さらには、ドイツの帝国主義的な植民地領有に対する否定的な見解や、帝国主義そのものに対する制約、そしてドイツの帝国主義の放棄さえも主張していた。本稿は、ヴェーバーの帝国主義論を多角的に考察することで、ドイツ帝国主義の経済的・政治的なメリットやデメリットに対するグローバリゼーションの観点をも含んだ彼の評価と、「世界政策」 を保持し得なくなった後の、ヨーロッパにおけるドイツの国際政治的な生存の追求のための帝国主義に対する彼の批判を発見した。それに加え、帝国主義を批判するヴェーバーにドイツの植民地支配・侵略に対する視座が欠如していたという、ドイツ・ナショナリストとしてのヴェーバーの帝国主義論の陥穽をも明らかにした。</p>

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