著者
花岡 正幸
出版者
一般社団法人 日本臨床薬理学会
雑誌
日本臨床薬理学会学術総会抄録集
巻号頁・発行日
vol.42, pp.1-S05-1, 2021

<p>薬剤性肺障害は、「薬剤を投与中に起きた呼吸器系の障害のなかで、薬剤と関連があるもの」と定義される。薬剤は医師が処方したものだけでなく、一般薬、生薬、健康食品・サプリメント、さらに非合法薬などすべてを含む。また、呼吸器系の障害とは肺胞・間質領域病変だけでなく、気道病変、血管病変、胸膜病変などが含まれ、さらに器質的障害から機能的障害まで様々である。</p><p>薬剤性肺障害の診断は、「すべての薬剤は肺障害を起こす可能性があり、薬剤投与中のみならず投与終了後にも発生することを常に念頭に置く」ことから始まる。すなわち、多種多様な薬剤を扱う臨床医にとって、肺に異常陰影の出現をみた場合、必ず鑑別しなければならない病態である。</p><p>薬剤性肺障害のうち、肺胞・間質領域に病変の主座を認めるものを「薬剤性肺炎」と呼ぶ。薬剤性肺炎の被疑薬として、抗悪性腫瘍治療薬、関節リウマチ治療薬、漢方薬などが多く、大部分は薬剤の投与開始から120日以内に発症する。中高年の男性に多い傾向があり、喫煙歴や既存の肺病変などリスク因子が存在する。国際比較により、海外よりも国内(日本人)での発生頻度が高いことが知られている。自覚症状は咳嗽、呼吸困難、発熱が多いが、その臨床病型は多彩で非特異的である。診断の手がかりは高分解能(HR)CT所見であり、画像パターンと既報告との類似性の評価が重要となる。薬剤性肺炎の画像パターンは、びまん性肺胞傷害(DAD)、過敏性肺炎(HP)、器質化肺炎(OP)、非特異性間質性肺炎(NSIP)、急性好酸球性肺炎(AEP)の5つに大別される。現在までのところ診断の決め手はなく、除外診断となる。鑑別診断としては、呼吸器感染症、既存の肺病変の悪化、および心原性肺水腫が重要である。</p><p>治療の原則は被疑薬の中止であり、重症度に応じてステロイド治療を考慮する。さらに、呼吸不全やDAD型肺障害を呈する症例は、ステロイドパルス療法を含めた集学的な治療が必要となる。予後は比較的良好であるが、一般的にDAD型肺障害は治療抵抗性で予後不良である。</p><p>本シンポジウムでは、薬剤性肺炎の病態、診断、治療など臨床像を中心に解説する。</p>

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