著者
上田 拓
出版者
福岡県水産海洋技術センター
雑誌
福岡県水産海洋技術センター研究報告 = Bulletin of Fukuoka Fisheries and Marine Technology Research Center (ISSN:09192468)
巻号頁・発行日
no.21, pp.7-19, 2011-03

1960年以降の筑前海区漁業の動向を包括的にとりまとめるとともに、比較的漁獲量が安定している二そうごち網の漁獲性能の動向について解析し、筑前海区漁業の動向と漁獲性能との関係について考察し、将来的な水産施策の方向性に関する提言を行う事を目的とした。筑前海区の全経営体数は1960年以降増減傾向を繰り返していたが1980年代以降減少傾向であった。漁獲量では1960年以降増加傾向にあったが、全漁業種では1990年代以降、まき網を除いた場合1980年代以降減少傾向を示していた。1隻1日あたり漁獲量は長期的に見て、ごち網、まき網は大きく増加傾向を示していたが、その他主要漁業では横ばい傾向であった。使用漁船隻数は5トン未満船が減少傾向、 5トン以上船は増加傾向にあり、使用漁船の大型化が見られた。二そうごち網では、1日あたり漁獲量は近年過去最高水準であるが、1時間あたり漁獲量は過去最高水準の7割程度であり、漁獲量減少を漁獲努力量である漁具掃海時間や、エンジン出力、漁船規模などの漁獲性能の増大により維持している事が推察された。特に1970年から2009年の間でエンジンの軸出力は10.6倍にも増加していた。以上より、漁業者は漁獲量の減少を漁獲性能を上昇させることにより維持しようとしてきたが、漁獲量は次第に減少してきており、資源量の減少が懸念された。当海区における水産資源の持続的な利用を実現させるためには、漁獲量のみならず、漁獲性能の変化に注視した事細かな資源管理、施策を講じる必要性があると考えられた。

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