著者
井原 久光
出版者
長野大学
雑誌
長野大学紀要 (ISSN:02875438)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.458-484, 1997-03

マーケティング・コンセプトに関する理論的な変遷を紹介し、マーケティング・コンセプトが変化するためには組織全体のパラダイムが変革されなければならないことを指摘した。特に「プロダクト・アウト」的な発想から「マーケット・イン」的発想へと転換するために、通常のマーケティング理論は「何故必要なのか」という外的必然性(why)と、そのために「どうしたらよいか」という内的方法論(how)を用意していない点で不十分と考えられる。たとえば、ビール業界ではプロダクト・アウト的な体質が依然として残っており、そのパラダイムを変革することは容易ではない。そこで、本稿では二つの事例研究を取り上げて、特に新製品開発に焦点をあててパラダイム変革の実際について分析を試みている。第一の事例では、このような業界で成功をおさめた「アサヒスーパードライ」の開発過程をもとに、どのようなメカニズムでマーケット・インの発想が生まれ、組織全体のパラダイム変革が進んだかについて、トップの役割とミドルの行動に分けて言及している。第二には、最近のヒット商品である「黒生」の新製品開発過程に着目して、スーパードライとの共通点を探りながら、組織全体で獲得したパラダイムがどのように強化されているかについて述べた。この種のパラダイム変革に関するケーススタディは、企業や業界レベルのみではなく、広く日本社会や政治レベルのパラダイム変革についても応用が可能であり、今後は、従来のマーケティング理論に加えて幅広い視野にたったパラダイム理論の構築が必要であろう。

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