著者
祝迫 得夫 古市 峰子
出版者
岩波書店
雑誌
経済研究 (ISSN:00229733)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.328-344, 2004-10

巨大企業エンロンの破綻と大手会計事務所アーサー・アンダーセンの消滅に代表される,近年のアメリカ企業における不正会計問題に関して,コーポレート・ガバナンス論の視点からの整理・検討を試みる.アメリカの不正会計問題は,一方でアメリカにおけるコーポレート・ガバナンスの変化,株主重視への流れの副産物としての側面をもっている.他方,より本質的な問題は,監査業務におけるゲートキーパー・モデルの破綻であり,その背景にあるのは大手会計事務所における監査業務とコンサルティング業務の利益相反問題である.サーベインス=オクスリー法による制度改革はこの問題の解決を試みたもので,ディスクロージャーの徹底と独立公共機関による監査制度のコントロールという2つの重要な要素を持っており,そのような改革の方向性は日本やEUにも波及している.しかし,業務の利益相反問題に関しては決定的な解決策が提示されたとは言えず,アメリカでのコーポレート・ガバナンス改革,会計システム改革がどのように進んでいくかに関しては,今後も注目が必要である.

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