著者
中尾 敏彦
出版者
山口県獣医学会
雑誌
山口獣医学雑誌 (ISSN:03889335)
巻号頁・発行日
no.32, pp.13-20, 2005-12

近年、乳牛の受胎率が世界的に低下してきており、その原因の解明と対策が求められている。わが国もその例外ではなく、受胎率の低下に伴って、分娩間隔の延長が認められている。このような、乳牛の受胎率低下の主な原因として、(1)乳牛の泌乳能力向上に伴って牛そのものが受胎しづらくなってきている可能性があること、(2)牛群規模の拡大に伴って飼育者自らが人工授精を行うことが多くなり、その結果として、人工授精技術上の問題が生じている可能性があること、(3)雄牛の生殖機能の低下などとの関連で人工授精に用いる凍結精液の精子の受精能が低下している可能性があること、などがあげられる。まず、授精技術上の問題が原因であるとすれば、受胎率の低下は、経産牛だけでなく、未経産牛にも見られるはずである。しかしながら、カナダのケベックでの大規模な調査成績では、未経産牛の初回および2回目受胎率は、1993年に比べて、2002年で低下しておらず、むしろ、やや高くなっていることが分かる。本稿では、特に経産牛でみられる受胎率低下の原因を、近年の経産牛で認められる生殖機能の変化との関係で解説するとともに、その対策にも言及してみたい。

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