著者
山田 敏之
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.323-341, 2007-08

商学部創立50周年記念 = Commemorating the fiftieth anniversary of the faculty十川廣國教授退任記念号 = In honour of Professor Hirokuni Sogawa50周年記念論文・退任記念論文本稿は,企業倫理再生の本質をとらえ,従来の企業倫理の制度化や仕組みづくりの限界を示すとともに,企業倫理再生に向けた新たな視点として組織学習の有効性を明らかにすることを目的とするものである。これにより,企業倫理の再生という現象をより厳密に説明するための理論構築の基礎を提示することができるものと期待される。企業の倫理問題は,ステークホルダーからの要請の変化あるいは新たなステークホルダーの出現という形で表面化する社会理念の変化,企業責任に対する社会的合意の水準が企業の理念や価値観と乖離することで生じる。このような乖離を埋め合わせていく作業が企業倫理の再生であり,それには計画的なものと自発的なものとが存在している。再生の有効性の視点からみると,事前に乖離の兆候を発見し,有効な変革行動に移行できる自発的な再生活動の生起ということが重要になる。企業倫理の制度化のアプローチには,①合理性やコントロールへの偏重,②個人の行動や思考の標準化,規格化の促進,③法令や規則遵守の強調,④個人の倫理性の向上を究極の目的としている点,⑤仕組みづくりの目的化といった問題があるため,自発的な再生を生起させるには限界がある。これを回避するには,組織内で自発的な問題発見,原因探索,変革行動が生起されるような倫理自律性を身につけ,個々人の相互作用により支配的な価値観の修正を行い,同時に構造や仕組みの創造プロセスまで遡って批判・検討する組織学習の視点を導入することが重要になる。

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