- 著者
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原口 雅人
- 出版者
- 埼玉県農林総合研究センター
- 雑誌
- 埼玉県農林総合研究センター研究報告 (ISSN:13467778)
- 巻号頁・発行日
- no.7, pp.42-55, 2008-03
食味等に優れたハタケシメジおよびコムラサキシメジについて施設・露地における栽培技術を検討した。ハタケシメジの施設栽培では、覆土未処理で保存菌株45系統をビン栽培し、栽培期間・収量および傘型で一次選抜後、生産者施設で収量および形質の優れた1菌株を選抜した。この菌株は覆土処理を省略した工程で対照品種に比べ同等以上であった。コムラサキシメジ施設栽培では、野生菌株を植菌し1ヶ月培養した菌床ブロックを鹿沼土に埋設後、露地発生のデータに基づく子実体発生環境下に静置することで、接種後70日頃から子実体が散発的に2ヶ月以上収穫が可能となった。菌床5個で収量はほぼ日々平準化し、子実体は虫害がなく、露地のものより形質が優れ、生産者施設で再現性が確認された。また、紫色が濃く堅牢な1菌株を選抜し、育苗箱を用いた菌床埋設栽培で接種後60日から40日間で200g/kg菌床以上を収穫できた。広葉樹樹皮堆肥を標準とする培地基材の未利用木質資源での置換を検討したところ、ハタケシメジでは粉砕したスギ樹皮堆肥で5割まで置換が可能であり、またマイタケ廃菌床堆肥では全量置換が可能であった。一方、コムラサキシメジでは、エノキタケ廃菌床腐熟物で半量まで、マイタケ廃菌床堆肥で全量置換が可能であった。コムラサキシメジの露地栽培では、菌床埋設後17日の9月下旬から11月中旬にかけて2菌株で子実体が発生した。1菌株は早生で菌床重量の2割の収量であったが、他の1菌株は晩生で収量が少なかった。なお、発生全期間で子実体の56〜100%がキノコバエ科の幼虫に食害され、コムラサキシメジの人工栽培には施設栽培が適していた。ハタケシメジの露地における原木栽培では、2年以上土中に埋設したスギ・サクラ原木を高圧滅菌後植菌することで原木全体に菌糸がまん延すると共に、一部の原木で菌糸束を経由し、子実体が発生した。