著者
長谷川 利拡 吉本 真由美 桑形 恒男
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.42-45, 2009-01

子実を収穫対象とする穀類においては、花器形成や開花・受精の段階で異常温度に遭遇すると、たとえ短期間でも大きく減収することがある。寒冷地でしばしば発生する冷害は、その典型例である。また、異常高温でも受精障害が発生する。これまでの実験から、開花時に高温にさらされやと、葯が裂開しにくくなったり、葯が裂開しても花粉が落ちにくくなったりすることで、受粉が不安定になることが知られている。受精過程の温度感受性は非常に高く、開花期頃の温度が34〜35℃以上になると不稔籾の割合が増加し、40℃以上になるとほぼすべての籾が不稔になることが、チャンバー実験で示された。そのため、今後予想される温暖化は、高温障害の発生を増加させて収量を大きく低下させることが懸念されている。2007年8月、関東、東海地域は、熊谷、多治見で観測史上最高の40.9℃を記録したほか、100以上の観測地点で過去の最高温度記録を更新するなど、広い範囲で異常高温に見舞われた。とくに関東平野では、埼玉県北部から群馬県南部、濃尾平野では愛知県北部から岐阜県南部で35℃を超える猛暑日が頻発した。このような異常高温は、これまで顕在化していなかった高温不稔を誘発する温度域であり、不稔による被害発生が懸念された、また、温暖化が水稲に及ぼす影響を検証するためにも、高温条件下での不稔発生の実態解明が必要であった。そこで、筆者らは群馬県、埼玉県、茨城県、岐阜県、愛知県と協力して、7月下旬から8月下旬までに出穂した132水田を対象に不稔発生を調査し、被害実態の解明を試みた。

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