著者
長谷川 利拡 高野 順也 崎原 健 三橋 民和 大嶋 和則 片野 学 仲里 長浩
出版者
日本作物学会九州支部
雑誌
日本作物学会九州支部会報
巻号頁・発行日
no.60, pp.9-12, 1994

九州の主要良食味品種のミネアサヒ,ヒノヒカリ,ユメヒカリおよび沖縄の主要品種のチヨニシキの出芽期~二次枝便分化期までの発育特性を,堀江・中川の発育動態モデルを用いて解析した。データベースは,阿蘇と西表における作期移動試験である(n=13)。本モデルは,37~114日にわたる発育日数の変動を3,7~5,2日の精度で推定した。ミネアサヒとヒノヒカリの発育速度は気温に対してほぼ直線的な増加を示し,日長の影響は14時間以上においてのみ認められた。一方,チヨニシキおよびユメヒカリの発育速度は,気温に対して23℃あたりから頭打ちを示し,広い範囲の日長に反応することがわかった。
著者
長谷川 利拡 吉本 真由美 桑形 恒男
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.42-45, 2009-01

子実を収穫対象とする穀類においては、花器形成や開花・受精の段階で異常温度に遭遇すると、たとえ短期間でも大きく減収することがある。寒冷地でしばしば発生する冷害は、その典型例である。また、異常高温でも受精障害が発生する。これまでの実験から、開花時に高温にさらされやと、葯が裂開しにくくなったり、葯が裂開しても花粉が落ちにくくなったりすることで、受粉が不安定になることが知られている。受精過程の温度感受性は非常に高く、開花期頃の温度が34〜35℃以上になると不稔籾の割合が増加し、40℃以上になるとほぼすべての籾が不稔になることが、チャンバー実験で示された。そのため、今後予想される温暖化は、高温障害の発生を増加させて収量を大きく低下させることが懸念されている。2007年8月、関東、東海地域は、熊谷、多治見で観測史上最高の40.9℃を記録したほか、100以上の観測地点で過去の最高温度記録を更新するなど、広い範囲で異常高温に見舞われた。とくに関東平野では、埼玉県北部から群馬県南部、濃尾平野では愛知県北部から岐阜県南部で35℃を超える猛暑日が頻発した。このような異常高温は、これまで顕在化していなかった高温不稔を誘発する温度域であり、不稔による被害発生が懸念された、また、温暖化が水稲に及ぼす影響を検証するためにも、高温条件下での不稔発生の実態解明が必要であった。そこで、筆者らは群馬県、埼玉県、茨城県、岐阜県、愛知県と協力して、7月下旬から8月下旬までに出穂した132水田を対象に不稔発生を調査し、被害実態の解明を試みた。
著者
長谷川 利拡
出版者
独立行政法人農業環境技術研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010

イネの交雑育種が組織的に行われるようになって100余年が経過した。この間に大気CO_2濃度はおおよそ80ppmも上昇したが、これまでの品種改良によって高CO_2濃度に適応した品種が作出されてきたかは明らかではない。今後さらに大気CO_2濃度の上昇が予測される中、これまでの品種の変遷と高CO_2に対する応答性との関連を明らかにすることは、将来の育種の方向性を検討する上で重要である。そこで、過去約100年間の遺伝的改良が高CO_2に対する応答に与えた影響を圃場条件で明らかすることを目的に、茨城県つくばみらい市のFACE実験施設で高CO_2処理(外気+200ppm)を2か年行い、明治時代から現在までに育成された新旧主要イネ品種の収量応答を比較した。供試品種は愛国(1882年品種登録)、農林8号(1934年)、コシヒカリ(1956年)、アキヒカリ(1976年)、あきだわら(2009年)の5品種である。籾収量はFACEにより有意に増加した(p=0.03)。FACEによる収量の増加率は、2ヵ年ともに農林8号が最も高く、アキヒカリが最も低かった。登録年と収量増加率の関係では、現代品種のあきだわらを除き、旧品種(愛国、農林8号)と新品種(コシヒカリ、アキヒカリ)を比較した場合、旧品種の収量増加率が高かった(p=0.01)。収量構成要素では、単位面積あたりの穂数の増加率が旧品種ほど高い傾向がみられたのに対し、1穂籾数の増加率は新品種ほど高い傾向がみられ、これまでの遺伝的改良によりCO_2増加に対する応答が穂数の増加から穂のサイズの拡大に移行したことが示された。登熟歩合の増加率は、粗籾収量と同様の傾向であった。稔実籾数に登熟籾1粒重を乗じて計算した登熟シンクキャパシティーと実収量との間には、年次・品種・CO_2処理にかかわらず非常に高い正の相関がみられた。この結果から、シンクサイズのCO_2応答性が収量応答を決定していたと推察された。
著者
林 健太郎 長谷川 利拡 小野 圭介 岩崎 亘典 豊田 栄 八島 未和 堅田 元喜 須藤 重人 和穎 朗太 常田 岳志 麓 多門 須藤 重人 南川 和則 和穎 朗太 松田 和秀 片柳 薫子 矢野 翠 中村 浩史
出版者
独立行政法人農業環境技術研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

つくばみらいFACE(開放系大気二酸化炭素増加)実験水田を舞台として、大気沈着および灌漑水に由来する窒素フローの実態を把握し、大気二酸化炭素(CO_2)増加、加温、および水稲品種が一酸化二窒素(N_2O)の生成、窒素無機化、窒素固定、水稲の窒素吸収、および土壌有機物の動態などの窒素関連過程に及ぼす影響の解明を進め、大気-土壌-水稲系の詳細な物質循環モデルを開発し、広域評価モデル・データセットを構築した。