著者
鳥田 宏行
出版者
北海道立林業試験場
雑誌
北海道林業試験場研究報告 (ISSN:09103945)
巻号頁・発行日
no.46, pp.1-51, 2009-03

本論文では、防風林の防風防雪効果を定量的に把握し、森林の公益的機能の高度発揮と風害・雪氷害を軽減する森林整備技術の向上に資するため、森林と気象現象(風、雪氷)間の相互作用を解明することを目的とする。森林の公益的機能の高度発揮に関しては、主に防風林の防風防雪効果と林帯構造の関係を解明するため、樹林帯模型を用いたモデル風洞実験や野外観測を実施した。その結果、幹枝葉面積密度Adと林帯幅Wの積であるW・Adは、相対最小風速(防風効果による最小風速)、最小風速の風下林縁からの距離、防風範囲と相関があり、W・Adは、防風林の防風効果を予測する重要な指標となりうることが示された。また、防雪効果としては、風洞吹雪実験(モデル)と野外観測(プロトタイプ)の結果を既存の相似則を用いて比較検討した結果、風速および吹雪時間に関する適合性の高い相似則が選定された。強風害の軽減に関する研究では、防風林の気象害(風・雪氷)と森林の構造および樹形との関係を解明するため、2002年台風21号により北海道東部の十勝地方に発生した風害や2004年の北海道日高町に発生した雨氷害のデータに基づく被害要因解析(数量化I類)や力学モデルを用いたシミュレーションを実施した。風害に関する要因解析結果からは、十勝地方の防風林における耐風性の高い樹種や被害を受けやすい配置などが明らかにされた。耐風性の高い樹種としてはカシワが、逆に耐風性が低い樹種としては、シラカンバ、チョウセンゴヨウマツ、ストローブマツが挙げられる。また、林分単位の被害予測として、数量化I類(被害率)および数量化II類(被害発生の有無)による被害予測式を構築した。雪氷害に関しては、被害要因の解析(数量化I類)を行って、更に軽害林分と激害林分の林況を比較し、樹高成長段階毎に林分の限界形状比(被害が発生するか否かの境界を示す形状比(胸高直径/樹高))が求められた。力学モデルを用いたシミュレーションは、十勝地方において防風林造成面積全体の6割から7割を占めるカラマツ林を対象に実施し、樹高と形状比が耐風性に及ぼす影響が明らかとなった。また、シミュレーションの確度を検証するため、実際の被害データとシミュレーション結果を比較したところ、高い適合性が確かめられた。結論として、防風効果と耐風性の両方を考慮した防風林の姿を、樹高成長段階毎に整理し、適正な本数密度を表に示した。

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