著者
五十嵐 善哉 座波 健仁 田中 規夫 佐藤 創 鳥田 宏行
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_229-I_234, 2018 (Released:2018-11-10)
参考文献数
17

防潮林は,津波に対して流体力低減や浮遊物捕捉などの効果を持つ.その一方で,樹木が破壊され流木化し家屋への被害を増長するリスクも有する.樹木が流木化せずその場にとどまる転倒破壊であれば,津波に対する抗力低減効果と捕捉効果は期待できる.樹木の胸高直径が太ければ破壊されにくくなるが,生育のためには定期的に密度を小さくする必要があり,間伐が行われる.本研究は,樹木破壊を高精度に取り入れたモデルを使用し,北海道のクロマツ間伐条件で生育した防潮林のデータにより,津波減勢効果と樹木破壊状況を評価することを目的とした.樹木破壊の観点では,間伐により樹木を十分に育てて胸高直径,枝下高を大きくした方が良いが,津波減勢の観点では,樹林帯の厚みが大きくなるように,ある程度密度があり,枝下が高くない条件が最もよい.
著者
鳥田 宏行
出版者
北海道立林業試験場
雑誌
北海道林業試験場研究報告 (ISSN:09103945)
巻号頁・発行日
no.46, pp.1-51, 2009-03

本論文では、防風林の防風防雪効果を定量的に把握し、森林の公益的機能の高度発揮と風害・雪氷害を軽減する森林整備技術の向上に資するため、森林と気象現象(風、雪氷)間の相互作用を解明することを目的とする。森林の公益的機能の高度発揮に関しては、主に防風林の防風防雪効果と林帯構造の関係を解明するため、樹林帯模型を用いたモデル風洞実験や野外観測を実施した。その結果、幹枝葉面積密度Adと林帯幅Wの積であるW・Adは、相対最小風速(防風効果による最小風速)、最小風速の風下林縁からの距離、防風範囲と相関があり、W・Adは、防風林の防風効果を予測する重要な指標となりうることが示された。また、防雪効果としては、風洞吹雪実験(モデル)と野外観測(プロトタイプ)の結果を既存の相似則を用いて比較検討した結果、風速および吹雪時間に関する適合性の高い相似則が選定された。強風害の軽減に関する研究では、防風林の気象害(風・雪氷)と森林の構造および樹形との関係を解明するため、2002年台風21号により北海道東部の十勝地方に発生した風害や2004年の北海道日高町に発生した雨氷害のデータに基づく被害要因解析(数量化I類)や力学モデルを用いたシミュレーションを実施した。風害に関する要因解析結果からは、十勝地方の防風林における耐風性の高い樹種や被害を受けやすい配置などが明らかにされた。耐風性の高い樹種としてはカシワが、逆に耐風性が低い樹種としては、シラカンバ、チョウセンゴヨウマツ、ストローブマツが挙げられる。また、林分単位の被害予測として、数量化I類(被害率)および数量化II類(被害発生の有無)による被害予測式を構築した。雪氷害に関しては、被害要因の解析(数量化I類)を行って、更に軽害林分と激害林分の林況を比較し、樹高成長段階毎に林分の限界形状比(被害が発生するか否かの境界を示す形状比(胸高直径/樹高))が求められた。力学モデルを用いたシミュレーションは、十勝地方において防風林造成面積全体の6割から7割を占めるカラマツ林を対象に実施し、樹高と形状比が耐風性に及ぼす影響が明らかとなった。また、シミュレーションの確度を検証するため、実際の被害データとシミュレーション結果を比較したところ、高い適合性が確かめられた。結論として、防風効果と耐風性の両方を考慮した防風林の姿を、樹高成長段階毎に整理し、適正な本数密度を表に示した。
著者
鳥田 宏行
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.88, no.6, pp.489-495, 2006-12-01
参考文献数
26
被引用文献数
6 5

2002年台風21号による防風林の被害要因の解析を行った結果,樹種,防風林の延長方向,林齢,風上森林区画(林小班)はおもな被害要因であることが示された。十勝の防風保安林のおもな造林樹種の中で,カシワはもっとも根返りに対する抵抗性が高い樹種であり,風上区画に配置すると被害が軽減されることが示された。本事例では北北東あるいは北東方向に延長された防風保安林(南東からの卓越風にほぼ直角方向)は被害を受けやすく,被害軽減のためには優先的に風上区画にはカシワ林を造成することが有効である。カラマツ林の林分構造の比較検討からは,同材積レベルの林分では,無被害林は被害林に比べて本数密度が低く,直径が太いことが示唆された。施業履歴の検討(林齢35〜45年)からは,被害林は無被害林に比べて間伐回数が少なく,本数密度も1.8倍高いことが示された。カラマツ林の根返りに対する抵抗性を向上させるためには,林齢35〜45年に達するまでに,本数密度約400本/haを上限として2〜3回程度の間伐を実施することが有効である。
著者
鳥田 宏行 武田 一夫
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.39-44, 2007-02-01
被引用文献数
2

森林の雨氷害を軽減する知見を得るため,2004年2月に北海道日高町で発生した雨氷害の調査データを解析したところ,直径階ごとの本数被害率の分布形状は,大きく五つのタイプ((1)中庸木に被害が多い,(2)劣勢木に被害が多い,(3)優勢木に被害が多い,(4)立木のサイズに関係なく被害率の変動が激しい,(5)直径階の大小に関わりなく被害率が一定)に分類された。分布形状に差異がみられるのは,風や着氷量などの気象因子が少なからず影響したためだと推察される。また,密度管理図上で軽害林分と激害林分間の判別分析を行った結果,的中率は75%であった。判別分析で得られた判別式と収量比数0.9線を用いて安全城と危険城の境界線を描き,被害軽減が期待できる範囲を密度管理図上に示した。次に,林分平均樹高との限界形状比の関係をロジスチック式で近似して限界形状比曲線を求めたところ,生育段階で限界形状比は異なることが示された。これらの結果は,森林の雨氷害を軽減するためには,植栽密度に沿った適切な間伐が重要であることを示唆している。
著者
佐藤 創 鳥田 宏行 真坂 一彦 今 博計 澁谷 正人
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.91, no.5, pp.307-312, 2009-10-01
被引用文献数
1 7

2004年台風18号により風倒被害を受けた,北海道美唄市内の防風保安林の風倒要因を解析した。この台風による最大風速は21m/sであった。調査を行った防風林はヨーロッパトウヒ,カラマツ,シラカンバ,ヤチダモ人工林である。防風林に21箇所の方形区を設定し,各個体の胸高直径と「根返り」,「幹折れ」,「無被害」別の被害状況を記録した。また,深さ別の土壌の硬さを簡易貫入試験機により測定した。さらに,樹種別に風倒被害の異なる要因を知るために,幹を側方に引き,根返りを発生させる際の最大抵抗モーメントを測定した。数量化2類による解析の結果,カラマツが最も被害を受けやすく,次いでヨーロッパトウヒ,シラカンバ,ヤチダモの順に風倒被害を受けにくくなった。胸高直径は30cmをピークに被害を受けやすかった。被害の種類については,カラマツとシラカンバは根返りしやすく,ヨーロッパトウヒは幹折れしやすかった。土壌の硬さは被害にあまり影響していなかった。根返り抵抗モーメントはヤチダモ>シラカンバ≒カラマツ≒ヨーロッパトウヒとなり,樹高や葉量の違いとともに,樹種別の風倒被害の違いを引き起こす要因となっていると考えられた。
著者
鳥田 宏行 武田 一夫
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.39-44, 2007 (Released:2008-07-10)
参考文献数
27
被引用文献数
2 2

森林の雨氷害を軽減する知見を得るため,2004年2月に北海道日高町で発生した雨氷害の調査データを解析したところ,直径階ごとの本数被害率の分布形状は,大きく五つのタイプ((1)中庸木に被害が多い,(2)劣勢木に被害が多い,(3)優勢木に被害が多い,(4)立木のサイズに関係なく被害率の変動が激しい,(5)直径階の大小に関わりなく被害率が一定)に分類された。分布形状に差異がみられるのは,風や着氷量などの気象因子が少なからず影響したためだと推察される。また,密度管理図上で軽害林分と激害林分間の判別分析を行った結果,的中率は75%であった。判別分析で得られた判別式と収量比数0.9線を用いて安全域と危険域の境界線を描き,被害軽減が期待できる範囲を密度管理図上に示した。次に,林分平均樹高との限界形状比の関係をロジスチック式で近似して限界形状比曲線を求めたところ,生育段階で限界形状比は異なることが示された。これらの結果は,森林の雨氷害を軽減するためには,植栽密度に沿った適切な間伐が重要であることを示唆している。
著者
鳥田 宏行
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.87, no.4, pp.354-357, 2005-08-01
被引用文献数
2

2004年2月22日から23日にかけて,北海道日高町では雨氷による森林被害が発生した。被害面積は約163haに達し,カラマツが被害面積全体の84%を占めた。本研究では,被害発生当時の気象状況を明らかにし,数量化I類によってカラマツ林の本数被害率と林況および地況との関係について解析を行った。22日から23日にかけての気象状況は,高度400mよりも上空では0℃以上の暖気層があった可能性が高く,これが標高の高いところでは雨氷害が発生しなかった理由と考えられる。斜面方位のスコアからは,北〜北西の方位が高く,着氷後の風によって被害が拡大したことが示唆された。平均胸高直径のスコアからは,直径が25cmよりも大きくなると,被害が抑制される傾向が示された。