著者
石山 夕記
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.64, pp.81-107, 2010

原著論文【目的】2004年に実施された「書誌ユーティリティ課題検討プロジェクト」の調査結果や報告を踏まえ, プロジェクト後のNACSIS-ILLの実態を調査することにより, 参加館における「謝絶」の状況とその理由を解明することを目的とする。【方法】一橋大学附属図書館における2004年度~2008年度のILLレコードを用いた謝絶理由の分析調査, 2004年度~2007年度の各館ごとの謝絶率と, 『日本の図書館』から得られる環境要因となる数値の分析調査, 『大学図書館間相互利用マニュアル』に記載された手順の実施度に対するILL担当者への質問紙調査という, 3つの調査を行った。【結果】1)現物貸借の最大の謝絶理由は研究室所在であるが, 文献複写では多様な理由から謝絶されていること, 2)謝絶の9割が所蔵館の事情による現物貸借と比べて, 文献複写では依頼館の事情による謝絶が5~6割を占め, 文献複写においてよりモラルの低下が進んでいること, 3)謝絶率に影響を及ぼしている環境要因は, 貸借における所蔵資料の量と, 職員数であること, 4)謝絶率の上位館と下位館で, 『大学図書館間相互利用マニュアル』に掲載された手順の実施度に大きな差が出る項目があり, これらの項目を確実に実施することが謝絶率の低下に繋がること, 5)近年の資料形態の多様化・複雑化により, 依頼館が依頼する前に確認する項目や範囲が拡大したこと, またそのことが心理的な職員数不足により一層の拍車をかけていることが明らかになった。

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