- 著者
-
安田 八十五
- 出版者
- 関東学院大学経済経営研究所
- 雑誌
- 関東学院大学経済経営研究所年報 (ISSN:13410407)
- 巻号頁・発行日
- vol.34, pp.123-146, 2012-03
2011年(平成23年)3月11日(金)に発生した東日本大震災によって日本の社会,ことに,東日本の地域社会は壊滅的な打撃を受けた。これには,「想定外」という想定を超えた大地震や大津波が発生したため,止むを得なかったという言い訳も見うけられる。しかしながら,地震学を中心とする現代の自然科学や工学のレベルでは,地震の予知や大津波の推測は,ほとんど不可能と言われており,自然科学や理工学を中心としたいわゆる理科系の学問のみに頼る大地震や大津波対策では対応は不可能と言っても言い過ぎではない。そこで,人文・社会科学や社会工学に基づく政策科学的なアプローチが今こそ求められている。筆者は,筑波大学在職中の1970年代から,1923年(大正12年)9月1日(土)に発生した関東大震災級の大地震が関東地方に発生した場合の,被害の予測及び復旧の方法の違いによるリスクシステム分析と政策シミュレーション分析等を研究し,オペレーションズ・リサーチ学会や地域学会等で発表して来た。例えば,約32年前に発表した安田八十五・土方正夫(1979)「第二次関東大震災のシミュレーション」(オペレーションズ・リサーチ学会誌,昭和54年9月)等を参照。そこで,今回の東日本大震災を主たる事例研究の対象として,阪神・淡路大震災,新潟中部大震災等も事例研究に加えて,大地震に伴う大津波や原子力発電所事故による被害の実態調査を行い,被害の最小化を実現するための地域社会システムの構築の仕方,及び復旧・復興・復活をスムーズに展開するための地域社会システムにおける政策の構築方法及び政策シミュレーション分析による政策代替案の評価等を実施し,政策分析と政策評価を行う。マクロエンジニアリング学会の循環型社会システム研究委員会にも協力してもらい,ことに,今回被害を受けた東北大学劉庭秀准教授(筑波大学安田ゼミ出身)と連携しながら,調査研究を進め,有効な政策提案を行う。