- 著者
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野口 順子
- 出版者
- 養賢堂
- 雑誌
- 畜産の研究 (ISSN:00093874)
- 巻号頁・発行日
- vol.68, no.3, pp.323-331, 2014-03
豚繁殖・呼吸障害症候群(porcine reproductive and respiratory syndrome: 以下PRRS)は1987年,北米において重篤な繁殖障害(流産,死産)および呼吸障害として初めて報告された。日本では1993年に肥育豚および死産子豚からPRRSウイルス(以下PRRSV)が単離されており,現在に至っても甚大な経済的損失の一要因となっている。PRRSVはアルテリウイルス属に分類されるエンベロープを有するRNAウイルスであり,感染豚の体内で容易に変異するため非常に高い遺伝的多様性を示すことが知られている。また抗原的多様性にも富んでいることから,市販ワクチンによる完全な制御は困難であると言わざるを得ない。さらにPRRSVはウイルス血症の状態が長く続く「持続感染」を引き起こすため,感染豚から非感染豚へ長期間に亘ってウイルスが供給されることになり,このことが農場からのPRRSV撲滅を困難にしている最大の要因となっている。