著者
真坂 一彦
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.91, no.5, pp.518-533, 2016-05

北海道における代表的な蜜源はニセアカシア,シナノキ,そしてクローバーであり,それにアザミ,キハダ,ソバ,トチノキと続くなど,蜜源の多様性が高い。この主要7蜜源植物だけでみると,樹木蜜源は66.6%を占め,さらに森林性のアザミを加えると75.6%に達することから,北海道では森林が重要な蜜源となっているといえる。道内における蜜源植物の分布には,植生や土地利用の在り方を反映した地域性がみられる。ニセアカシアは道央の旧産炭地に多く,シナノキを対象とした蜂群数は原生的な森林が残っている道北やオホーツクで多い。蜜源の多様性や地域性を生む背景には,明治まで過度な山林利用がなかったことや産炭地だったという歴史的要因,そして冷温帯林~北方林に特有の樹種構成などの気候的要因が指摘できる。日本全体でも蜂蜜生産量が多いニセアカシアは,侵略的外来種として外来種問題の俎上に載ったが,ミツバチが果樹野菜のポリネーションに欠かせないことから,2015年,産業管理外来種に指定された。シナノキは林業上,重要な樹種でもあり,戦後,広葉樹林の伐採が進んだことで蜂場の小規模化・分散化がすすみ,ヒグマ被害を誘発したと考えられる。

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