- 出版者
- 大東文化大学
- 巻号頁・発行日
- 2015
中国において書はいかにして芸術となったか。本論は、その答えを、書を芸術としてみることを可能にするような「思想」の形成過程に探ろうとする。書を批評することは、およそ後漢の頃にはじまり、魏晋南北朝に盛んになった。それはいわゆる「書論」として結実する。書についての思想を尋ねようとするなら、第一に参照しなければならないのはそうした書論であろう。しかし、書という芸術を支える思想の形成過程を考えるとき、狭義の書論のみを研究対象とするのでは不充分である。もとより書は領域横断的な文化であり、書をめぐる思想は、さまざまなテクストに散在しているからだ。本論は、このような視座に立って、書論のみならず、文字学、言語哲学、文学論、画論といった分野のテクストを互いに接続し、交差させる。それによって、書をめぐる「思想」が形成されてゆくダイナミックな過程を浮かび上がらせようとした。