- 出版者
- 近畿大学農学部
- 雑誌
- 近畿大学農学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Agriculture of Kinki University (ISSN:04538889)
- 巻号頁・発行日
- no.42, pp.127-144, 2009-03
土壌動物の持つ機能についてリターバック法を用い、近大里山内において樹種毎に落葉の分解にどれだけ土壌動物が寄与しているのかを調べた。その結果、土壌動物は落葉量の多い11月や12月の時期には落葉量と同じように増えているが、落葉量が少ない4月から7月の時期にかけても個体数が多かった。また、8月の夏の時期にはもっとも少なかった。どの樹種においてもこの傾向が見られた。また、リターバック内の落葉の残存率は、9月頃まで減少し続け、その後は横ばいに推移している。分解速度にてヒノキの4ヶ月目と6ヶ月目にピークが現れたのは土壌動物の個体数増加に伴う分解促進の結果と思われる。落葉の分解が進むにつれて落葉中の窒素含有率が上昇している。これは落葉中の炭素が消費されていることを意味している。炭素は土壌動物や土壌微生物にとってエネルギー源であり、窒素は土壌微生物の体を形作る養分である。落葉の多い時期に、土壌動物の個体数が増えているのは、9月頃の分解のピークによって分解者以外の利用できる養分が増え、分解者以外の土壌動物の個体数が増えはじめ、それらが土壌中を動きまわることにより、土壌が攪拌され、新たな団粒の形成等により、分解者である中型土壌動物の生存可能空間が作られる。そこに落葉が供給されることにより、再び分解者の活性が高まったためであると考えられる。落葉の少ない、3月頃から8月の手前までの時期にも土壌動物は個体数を増やしているが、これは、寒くも無く、暑くもない温暖な気候である春という時期が土壌動物の活動を活発にさせ、個体数を増加させたものと推察される。8月の土壌動物の個体数が少ないときに分解速度が減少したり、落葉の多い時期に比例するように土壌動物は増えていることをはじめとするこれらの結果から土壌動物の落葉分解という機能が示された。また、落葉の分解にもっとも貢献していたのはダニ目のササラダニ亜目であった。