著者
池田智子 山下純子 小澤靖枝
雑誌
日本教育心理学会第59回総会
巻号頁・発行日
2017-09-27

問題と目的 村上(1986)は,抑うつ傾向と成功失敗事態での原因帰属のパターンの関係について検討を行い,抑うつ傾向が高いほど,自分の内的要因(能力・努力など)とは関係のない,自分にとって統制不可能な外的要因へ帰属することを報告している。また,平松(2003)は,対人的傷つきやすさは成功場面よりも失敗場面における原因帰属スタイルとの関係が強く,対人的に傷つきやすい人ほどその失敗が自分の内部に内在していると帰属しやすく,また失敗の原因は安定的で,普遍的であると考える傾向があると報告している。 さて,近年,教育現場,臨床現場等多くの場面で,さまざまな不適応的傾向から起こる不適応状態に陥っても,それに立ち向かう力としてのレジリエンス(resilience)という概念に注目が集まっている(小塩・中谷・金子・長峰, 2002)。抑うつ傾向や傷つきやすさといった不適応傾向にある者が特有の原因帰属のスタイルを持っているならば,レジリエントな状態にある者も,適応状態につながる特有の原因帰属のスタイルを持っていると予想される。そこで,本研究では,大学生のレジリエンス要因と原因帰属スタイル,そして人間行動の原因帰属をどれくらい多く行うかという帰属の量,言い換えれば,原因帰属の複雑性の関係について検討することを目的とした。方 法調査対象者 女子大学生121名(有効回答者)。質問紙1. 二次元レジリエンス要因尺度(BRS)(平野, 2010)21 項目に5件法で回答を求めた。2. 帰属複雑性尺度(佐藤・川端, 2012)28項目に7件法で回答を求めた。3. 原因帰属スタイル測定尺度(村上, 1989)学業達成領域と対人関係領域のそれぞれ成功場面と失敗場面5場面における,原因帰属の外在性,安定性,普遍性について7件法で回答を求めた。手続き 授業時間を利用して,集団で質問紙調査を行った。結果と考察 二次元レジリエンス要因尺度の得点を因子分析した結果,「楽観性」「行動力」「自己理解」「他者理解」の4因子が抽出された。各レジリエンス要因因子の得点と帰属複雑性尺度の得点,各原因帰属スタイルの得点間の相関分析の結果(Table1),レジリエンス要因因子の「自己理解」「他者理解」と主に対人領域での成功場面において正の関連が見られ,他者や自分を理解する自信が高いほど,対人関係がうまくいった原因を自分に帰属し,また,その原因は安定的だとみなしていることがわかった。また,このレジリエンス要因の「自己理解」と「他者理解」の2つの因子の得点と原因帰属の複雑性得点との間に正の相関がみられ, 自己や他者を理解する自信が高いほど,多くの原因帰属を行なうことがわかった。これらの結果から,レジリエンス要因の高い者に特徴的な原因帰属のスタイルと量があることが示唆された。

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