- 著者
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林 信太郎
- 雑誌
- 日本地球惑星科学連合2014年大会
- 巻号頁・発行日
- 2014-04-07
児童・生徒やジオパークのツーリストが,実感を持って付加体を理解することを目的として,付加体に見られるデュープレックス構造を再現するアナログ実験を開発した。本実験は簡便であり,粉砂糖,ココア,キッチンペーパーなどの身近な材料だけを使用している。 付加体は日本の骨格をつくり,日本列島には普遍的な存在であり,北は白滝ジオパークから南は本部半島ジオパーク構想まで,様々なジオパークに出現する。しかしながら,その形成過程を言葉で説明する事はむずかしい。特に,本研究で対象とする児童・生徒やジオパークのツーリストには,実感を持って現象を理解することの他に,実験そのものの注目度も重要であり,「楽しさ」を演出する事も考慮して開発を行った。 これまで提案された付加体実験は,砂箱実験(山田,2006,兼田ほか,2004)や,岡本(1999,2000)の小麦粉断層断層実験を応用したものがあった。今回は,玄武岩,石灰岩,チャートなど海洋地殻の一部とその上の深海堆積物がデュープレックス構造をつくりながら付加する過程(木村,2002)をアナログ実験で再現する事を目標とした。海洋地殻の上部の枕状溶岩層下部にできる強度の弱い部分を,摩擦係数の低いオーブンペーパー(クッキングペーパー)とココアとの境界面で表現した。また,粉砂糖部分は強度が弱く上面に断層が形成されやすい。クッキングペーパーは,紙にテフロンあるいはシリコンをコーティングしたものであり,電子レンジ調理やフライパンによる調理に用いられ,スーパーマーケットで安価に入手できる。摩擦係数はたいへん低く,食材が貼り付きにくい。 <実験の方法>用意するもの:粉砂糖,純ココア,クリープなどの粉末クリーム,クッキングペーパー,茶こし,スプーン,紙コップ,キッチン用ラップ,紙粘土1)紙粘土をラップで包み,「大陸」をつくる。2)40cmほどにカットしたクッキングペーパーを机上に置く。3)オーブンペーパー上にココアの層をつくる。茶こしでココアを落とし,2mmほどの薄い層をつくる。クッキングペーパーが沈み込む海洋地殻の岩脈群から下部の層をあらわす。ココアは最上部の枕状溶岩のさらに上部をあらわす。4)ココアの層の上に,茶こしで粉砂糖をふりかける。2mmの薄い層をつくる。5)「大陸」をクッキングペーパーの端におく。6)ミルクを大陸及びココアと粉砂糖の層の大陸側にふりかける。これは陸源の堆積物を表現している。7)「大陸」を固定したまま,クッキングペーパーをひく。これはもちろんプレートの沈み込みを表現している。8)大陸にココアや粉砂糖が付加する。ココアと粉砂糖の層がセットになり,次々と底付けされて行く。9)最終的にココアー粉砂糖の層序が数回繰り返すデュープレックス構造様のものが形成される。10)ココア,粉砂糖,ミルクをまとめて紙コップにいれお湯を注ぎ処理する。使用する材料の量をココアとして美味になるようにあらかじめ調整しておくと良い。 今回の実験は,本部半島ジオパークで行われたサイエンス・カフェで実践した。今後,学校教育の現場でも使用し,その効果を検証したい。