著者
林崎 涼 白井 正明
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2015年大会
巻号頁・発行日
2015-05-01

石英や長石などの鉱物粒子から年代を推定できる光ルミネッセンス (OSL) 年代測定法は,津波堆積物自体から堆積年代を見積もる手法として有効と考えられている.また,OSL 年代測定で鉱物粒子の露光状態を見積もることにより,堆積物の運搬・堆積過程を推定する研究もなされており,その手法は津波堆積物にも適用できる可能性がある.しかしながら,津波堆積物の OSL 年代測定例は少なく,正確な堆積年代を見積もれるのか,また露光状態を見積もることで運搬・堆積過程を推定できるのかは明らかでない.本研究では,福島県相馬市と南相馬市における東北地方太平洋沖地震の津波堆積物を対象としてOSL 年代測定を行い,堆積年代と運搬・堆積過程の推定についての有効性を明らかにした.アルカリ長石の単粒子を用いた OSL 年代測定の結果, 11 地点,26 試料全てにおいて,東北地方太平洋沖地震の津波堆積物の堆積年代である現世の堆積年代を示す粒子を見出すことができた.単粒子を用いた OSL 年代測定を行うことにより,津波堆積物の堆積年代を見積もることができると考えられる.一方で,著しく古い堆積年代を示す粒子の混入も確認できたことから,複数粒子を同時に測定する一般的な測定方法では,津波堆積物の正確な堆積年代を見積もることは難しいといえる.また,津波堆積物に含まれる砂質の鉱物粒子は,運搬過程でほとんど露光していないことが明らかになった.すなわち,津波堆積物中の砂質の鉱物粒子は,供給源となる堆積物の堆積環境の露光状態を反映していると考えられる.津波堆積物に含まれる鉱物粒子の露光状態を OSL 年代測定により見積もることで,津波堆積物の堆積年代だけでなく,供給源となった堆積物の堆積環境の推定にも有効だと考えられる.

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