著者
鈴木 毅彦 白井 正明 福嶋 徹
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.7, pp.343-356, 2016-07-15 (Released:2016-08-02)
参考文献数
65
被引用文献数
3 3

三重会合点の北西数百kmに位置する関東平野には,かつての前弧海盆とその周辺域に堆積した上総層群が分布する.鮮新世後期から第四紀前〜中期に堆積した同層群中には多数のテフラが含まれている.これらを用いた火山灰編年研究により,日本列島最大規模の面積をもつ関東平野の地形発達・古地理,地殻変動,そして上総層群にテフラを供給した爆発的火山噴火の復元が可能となる.こうした研究を進めるには関東平野の広大な地下に埋もれたテフラも解明する必要がある.現在関東平野において,ボーリングで確認された地下のテフラや,地表に露出するテフラの対比・認定が進められつつある.本コースでは,関東平野南部,とくに狭山丘陵と多摩丘陵において前期更新世テフラを観察し,同時代のテフロクロノロジーとその応用研究の現状を紹介する.
著者
宇津川 喬子 白井 正明
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.89, no.6, pp.329-346, 2016-11-01 (Released:2019-10-05)
参考文献数
87
被引用文献数
2

粒子形状の研究は理学・工学のさまざまな分野で行われているが,長年にわたる用語の不統一や,近年における画像解析を中心としたデジタルな手法への移行といった傾向があることから,研究の現状を整理する必要がある.本稿では砕屑物の形状,特に昨今注目される「円磨度」に焦点をあて,20世紀以降の研究史を紹介する.円磨度は,半世紀以上前に提案された定義や階級区分が今日でも多用されている.中でも,短時間で半定量的に円磨度を計測できるKrumbeinの円磨度印象図は今後も活用が見込まれることから,より再現性の高い測定を行うための補助フローチャートを提案した.また,2Dおよび3D画像解析では高解像度化に伴う粒子の輪郭の評価が焦点となることから,曖昧であった円磨度と表面構造の境界を再定義した.今後,画像解析は円磨度を含めた形状研究の主軸となる可能性が高く,画像解析に対応した粒子形状の評価方法をさらに議論する必要がある.
著者
林崎 涼 白井 正明
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.327-340, 2015-07-01 (Released:2019-10-05)
参考文献数
50
被引用文献数
2 3

石英や長石などの鉱物粒子は,光を浴びることで自身も発光する光ルミネッセンス(OSL)という性質をもつ.OSLの発光強度は放射線の被曝量に比例して増加し,露光により急減する.本研究では,アルカリ長石粒子の露光状態の違いに起因する残存OSL強度と,残存OSL強度がほぼ0,すなわち最近露光した粒子の含有率を示す露光率の変化傾向から,信濃川大河津分水路河口周辺の海岸における砂質粒子の運搬過程を推定した.その結果,分水路河口付近の野積海岸から北東に約17kmの角田浜まで,残存OSL強度の減少および露光率の増加が見られることから,この区間で北東方向へ砂質粒子が運搬されていることが推定された.一方で,野積海岸周辺では単純な変化傾向は見られず,近年の海岸侵食による残存OSL強度の大きい粒子の混入が示唆された.ごく最近の砂質粒子の運搬過程を推定する手法として,残存OSL強度と露光率は有効であり,より正確な運搬過程を把握できる可能性がある.
著者
白井 正明 渡辺 万葉 宇津川 喬子 林崎 涼 高橋 尚志 小尾 亮 加藤 裕真
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2015年大会
巻号頁・発行日
2015-05-01

静岡平野から駿河湾に注ぐ安倍川の源流域には,大規模崩壊地である大谷崩れが存在する.大谷崩れ周辺は過去幾度も大規模な崩壊を繰り返し,18世紀初頭の宝永東海地震の際の大崩壊では,崩壊土砂が土石流となって大谷川と安倍川上流の谷を埋めたとされる(例えば,土屋,2000).町田(1959)は,大谷崩れ起源の崩壊堆積物量の見積もり値を1.2×108 m3 と推定すると共に,崩壊堆積物に関連する地形を河成段丘発達史の視点から解釈している.安倍川本流において大きな落差をもつ赤水の滝については,安倍川が土石流堆積物を下刻しつつ形成した,崩壊による土砂で谷が埋まり尾根筋からの越流により滝が形成された,などの記述が見られるが,いずれも十分な根拠を示しているとは言い難い.赤水の滝周辺の「土石流」堆積物と基盤の古第三系頁岩の分布を調査すると,赤水の滝は実際には土石流堆積物上を流れ下っておらず,基盤岩上を流れ下っていること,土石流堆積物の分布は赤水の滝のすぐ上流から東側を通り,滝のすぐ下流で再び現在の安倍川に合流することは容易に見てとれる.さらに赤水の滝周辺の土石流堆積物露頭において,土石流堆積物の礫の配列から堆積物形成時の古流向を推定した.赤水の滝の下流側(南側)では,土石流堆積物は安倍川左岸の赤水の滝展望台周辺に比較的良く露出する.礫のインブリケーションから古流向は概ね西への流れであったと解釈される.また長軸は古流向にほぼ平行であり,転動とは別のプロセスにより礫が運搬されていたことを示す.岩相としては礫支持であり,一般的な土石流堆積物(基質支持)と比べて礫の濃度が高いが,基質には泥分も多く含まれており,土石流の一種として差し支えないと思われる.一方赤水の滝上流側では植生が繁茂し,巨礫の直下にかろうじて露出している中礫のインブリケーションから推定される古流向は概ね東への流れを示した.以上より,赤水の滝は大谷崩れの崩壊に端を発した土石流堆積物によって安倍川の谷が埋められた際に,水流が元々の尾根を越流し,蛇行した谷をショートカットして流れ落ちることにより形成され,現在も基盤の頁岩を下刻しつつある,と考えるのが妥当であると結論づけられる.
著者
林崎 涼 白井 正明
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2015年大会
巻号頁・発行日
2015-05-01

石英や長石などの鉱物粒子から年代を推定できる光ルミネッセンス (OSL) 年代測定法は,津波堆積物自体から堆積年代を見積もる手法として有効と考えられている.また,OSL 年代測定で鉱物粒子の露光状態を見積もることにより,堆積物の運搬・堆積過程を推定する研究もなされており,その手法は津波堆積物にも適用できる可能性がある.しかしながら,津波堆積物の OSL 年代測定例は少なく,正確な堆積年代を見積もれるのか,また露光状態を見積もることで運搬・堆積過程を推定できるのかは明らかでない.本研究では,福島県相馬市と南相馬市における東北地方太平洋沖地震の津波堆積物を対象としてOSL 年代測定を行い,堆積年代と運搬・堆積過程の推定についての有効性を明らかにした.アルカリ長石の単粒子を用いた OSL 年代測定の結果, 11 地点,26 試料全てにおいて,東北地方太平洋沖地震の津波堆積物の堆積年代である現世の堆積年代を示す粒子を見出すことができた.単粒子を用いた OSL 年代測定を行うことにより,津波堆積物の堆積年代を見積もることができると考えられる.一方で,著しく古い堆積年代を示す粒子の混入も確認できたことから,複数粒子を同時に測定する一般的な測定方法では,津波堆積物の正確な堆積年代を見積もることは難しいといえる.また,津波堆積物に含まれる砂質の鉱物粒子は,運搬過程でほとんど露光していないことが明らかになった.すなわち,津波堆積物中の砂質の鉱物粒子は,供給源となる堆積物の堆積環境の露光状態を反映していると考えられる.津波堆積物に含まれる鉱物粒子の露光状態を OSL 年代測定により見積もることで,津波堆積物の堆積年代だけでなく,供給源となった堆積物の堆積環境の推定にも有効だと考えられる.
著者
白石 建雄 白井 正明 西川 治 鈴木 隼人 古橋 恭子 星 多恵子
出版者
The Geological Society of Japan
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, pp.S33-S50, 2008
被引用文献数
3

男鹿半島には厚い海成更新統が分布しており,その中には多数の広域テフラが挟まれている.また酸素同位体ステージ12 以降については,酸素同位体比変動曲線で示される主要イベントが地層・地形記録として非常によく保存されている.それゆえ,第四紀層序学的に非常に重要な地域である.この男鹿半島を含む日本海沿岸地域は日本海東縁変動帯の一角を占め,八郎潟を挟む東西両地域一帯には,南北方向に長軸を有する活動的逆断層地溝(八郎潟-秋田湾地溝)が成立している.そのため新期の地殻変動が非常に激しく,地層や更新世海成段丘は大きな変形・変位を蒙っている.本見学旅行では,第四紀地殻変動の影響を強く受けた堆積層,地形を観察する.